母が天国へ旅立ったのは私の誕生日の前日。


 

 私の誕生日は母のお通夜であった。



 今年の誕生日は、悲しい気持ち、辛い気持ちでいっぱいだった。



 「今年は誕生日どころではなくなったな。」



 大きくため息をついた。



 止めどなく涙が溢れた。



 母のお通夜には、多くの人が参列してくれた。



 お通夜が無事に終わり、家族控え室に戻り、母の亡骸と一緒に一夜を過ごす。



 棺の中に入っている母の顔を眺めた。



 優しい顔をして眠るように横たわっていた。



 「最期まで、よく頑張ったね。」



 痩せてしまった母親の顔を手で撫でながら、そう語りかけた。



 どこからか息子が何やら小さな箱を持ってきた。



 「おばあちゃんからのパパへのプレゼントだよ。」



 「えー⁉️」



 思わず声が出た。



 息子が持っていたのは誕生日ケーキ。



 「今から誕生日お祝いをしよう。」



 息子が言った。



 涙が溢れた。



 ケーキのプレートには、生前、母が私を呼んでいたときの呼び名が書かれていた。



 「おばあちゃん、一緒にパパの誕生日祝いをしよう。」



 息子が棺の中の母に語りかけた。



 誕生日ケーキにろうそくを灯した。



「HAPPYBIRTHDAY to you♪♩」



 ささやかな誕生日祝いが始まった。



 実は息子の嫁がしてくれたことだった。



 息子夫婦の心遣いが嬉しかった。



 一緒に私の誕生日祝いができて母もさぞかし嬉しかったと思う。



 悲しみに包まれていた私の心に光が差した感じがした。



 いつも私の誕生日に電話をくれていた母。



 「誕生日に辛い思いをさせてごめんね。」



 心の中で母の声がした。