五月の團菊祭以来、今年の私は歌舞伎づいているので(笑)
かなり以前に買って放置していた『きのね』(宮尾登美子・新潮文庫)を
ようやく昨日から読み始め、きょうの午後、ほぼ読み終えた。
歌舞伎ファンの間では有名な小説なのだが、菊五郎関連でなかったせいか、
私は何年も前に買ったまま、なんとなくきっかけがなく放置していた。
買った当初はどういう設定の小説か、わかっていたのだが、
今となっては、私は前提をすっかりなくしていて、
「確か、(音羽屋でない)歌舞伎俳優の誰かがモデルの話だった筈……」
という記憶があるのみだった。
それで読み始めて、ともあれ「誰」の話であるかを突き止めようとしたのだが、
出だしが、昭和8年――。
結核で療養中の歌舞伎俳優の家に、お手伝いとして主人公の「光乃」が雇われる、
というところから物語は始まっている。
フィクションという扱いなので、モデルとなった俳優も関係者も実名では登場していない。
しばらく「光乃」の育った家のことや両親の出自が語られ、
18歳の彼女が、歌舞伎の家に奉公に上がることになった経緯が説明されるのだが、
その彼女の運命を変えるのが、役者三兄弟の長男で美貌の「雪雄」。
この「雪雄」のすぐ下の弟が、物静かで思慮深い「新二郎」、
そして三男の「優」は『五尺五寸、十七貫、視力1.2という堂々たる体格を買われ』
徴兵検査で甲種合格、……と、ここまで読んでわかった、この「優」は二代目松緑だ(爆)。
ということは、「雪雄」は先代の團十郎、「新二郎」は先代幸四郎だ。
つまりヒロイン「光乃」は第十一代・市川團十郎の夫人、堀越千代さんだったのだ。
モデルの團十郎本人のことでなく、体格と甲種合格の設定から松緑を特定できたなんて、
全然予想もしなかった、意外なとっかかりだった(汗)。
わかってみると、この小説には、私の知る限り、事実に近い逸話が巧みに盛り込まれ、
細部や登場人物の内面は作者の創作であるにしても、
時系列に添って團十郎とその夫人の周辺が描かれていると感じられた。
昭和40年に亡くなった先代の團十郎を、昭和39年生まれの私は観ていないのだが、
こういう小説を読んでみると、いっそう、先代の舞台を観てみたかったと思った。
高麗屋三兄弟のうち、松緑の舞台だけは、私は結構観ることが出来たが、
『きのね』に描かれる「優」の物語が途切れたその後のことを、
私なりに、いくつかは記憶しているので、そうしたこともまた切なく思い出された。
……そして、今度の9月の松竹座、海老蔵が出るんだからやっぱり観に行こう、と思った(殴)。
明日から、e+の「九月大歌舞伎大阪公演プレオーダー」が始まるのだわよ(汗)。