ポゴレリチの映像は新たなライブ収録などまずあり得ないので、
テレビ放映されるとしたらDVDとして発売されたものばかりであり、
長いファンにとっては、およそ新鮮味の無いものが多いのだが、
来月のクラシカ・ジャパンの企画は、例外的に有り難いものだと思う。
なぜなら、DVD『ワルシャワの覇者』が放映されるからだ。
【5週連続企画】ショパン国際ピアノ・コンクールの記録!ワルシャワの覇者
初回放送:1月2日(日)より毎週日曜20:00
このDVDは確か2000年か2001年に、31枚組の全集として学研から発売されたのだが、
ムザとの契約が切れた2008年3月25日以降は販売されていなかったと思う。
私自身がこれを買ったのは、2001年の終わりか、2002年の始めだったと思うのだが、
バラ売りはなく定価が338,000円と、主婦にとって非常に高かったので、
購入を決めるまでにはさんざん悩み、いろいろと特典も利用したものだった。
31枚中、ポゴレリチの姿や映像が見られるディスクは6枚もあって、
中でもDisc 8『イーヴォ・ポゴレリチ――記者会見とインタビュー』は、
最初から最後までポゴレリチだけの一枚だ。
優勝者ですら、まるまる一枚を独占している人は多くないというのに、
予選落ちの人間をここまで特集するって一体(爆)。
ヤン・エキエル氏だったかほかの方だったかが、この企画内容について、
何か苦言を呈していらした記憶が、私には微かにあるのだけれど(逃)。
それはともかくとして、2011年1月のクラシカ・ジャパンはショパン・コンクールの特集で、
『ワルシャワの覇者』についても、今後、順次放映されて行くのではないかと思われる。
今回の放映分でポゴレリチに関する映像が出て来るのは↓で、内容は演奏ではなくインタビューだ。
インタビューで綴る第10回 初回放送:1月23日(日)20:00
『本コンクール最大のスキャンダルとして伝わる1980年の様子を、関係者の当時のインタビュー映像で綴る。独創的な演奏スタイルで物議を醸したイーヴォ・ポゴレリチ、アジア初の優勝者ダン・タイ・ソン、さらに審査員をボイコットしたマルタ・アルゲリッチの幻の秘蔵映像は必見。■字幕/約38分』
これはもとのDVD全集のうち、Disc 7『インタビューで綴る第10回』一枚分だと思われる。
若い頃のポゴレリチを、美形だ美形だと言う人が世間に多いのだが、
コンクール当時の彼は痩せすぎているせいか(重症の肝炎で闘病した直後だった)、
私から見ると、ちょっと、いやかなりヘン(爆)なところがあちこち目につく。
勿論、今もヘンなのだが(爆爆)、「ヘン」の傾向が全然違うのだ。
今のポゴレリチは、挙動不審でも概ね機嫌の良いオジサンに見えることが多いが、
80年頃のポゴレリチは、ワイルドなのに男の子か女の子かわからない雰囲気があり、
ステージマナーもシナシナとしていて不思議だ。
演奏にしても、頭に血が昇ったようなザツな感じで、信じられないほどミスも重なっており、
80年代後半以降のポゴレリチの演奏を、幾度も生で聴いて知っている私にとっては、
このコンクールのときのポゴレリチはかなり異常な状態だったと思えてならない。
しかしそれらも込みで、コンクールという、ストレスと興奮のただ中にあった、
若いポゴレリチの実像が、克明に記録されているという意味で、
『ワルシャワの覇者』はやはり貴重な資料であると思うし、
予選映像において、二度と無い演奏の数々が聴けることも、間違いない。
ポゴレリチは、このときの落選に未だに納得していないことを幾度も公言しているのだが、
少なくとも現在の彼の演奏は、80年当時とは既に比較にならないほど特異なものであるし、
『ポゴレリチの才能はコンクールの枠では捉えられないものだと考える』
という彼への当時の審査員の決定は(審査員長らの記者会見でその言及がある)、
結局のところ、至当であり先見の明のあるものだったのではないかと私は感じている。
同時に、ひとりの演奏者の「落選」が、これほどコンクール全体を大きく動かした事件は他になく、
ポゴレリチの才能の大きさ・異質さを端的に記録した出来事であったとも思っている。
なお、DVD全集のうち、ポゴレリチに関係のあるディスクの内容詳細については、
拙サイトで私が、かつてクドクドと(苦笑)書きましたので、
お時間おありの方は、お読み下さいましたら嬉しいです。
DVD『ワルシャワの覇者』収録内容・解説