昨夜、寝る前に手洗いに立って、
帰りに、暗い台所を通過しようとしたら、
……ガサ、……ガサガサ、……ガサ…
と何か、スーパーのビニール袋をそっとこするような、
不規則で奇妙な音が聞こえた。
むっ!?と電気をつけてみたらば。
不燃ゴミを入れているゴミ箱の中に、
ゴキがいた。
ひぃぃぃぃ~~~!!!
私は咄嗟に、ガムテープで、ゴミ袋の口を貼った。
貼って貼って貼りまくった。
中で、ゴキ男(勝手に♂にした)はガサゴソ動いていたが、
自分が何をされたかは気が付いていないようだった。
ふん。これで出られまい。一生そこに居ろ。
食べ物に囲まれて、極楽だろうが。
蜂の巣にツッコんで、蜜だらけになったプーさんの心境か?
念のため、ゴミ袋全体を更に別の半透明ビニール袋に入れ、
その口をしばってから、私は就寝することにした。
さて、今朝。
起きて私は一番に、昨夜のゴキ男のところに行った。
すると、な、なんと!!
ゴキ男は、ガムテープを突破し、
半透明ゴミ袋のすぐ内側まで来ていたのだった!!
プリンス・テンコーか、オノレは!!!
怖気をふるった私は、更に、もう一枚の半透明ゴミ袋で、
そいつ全体を覆い、袋の口を厳重に縛り、
今度は、屋外の倉庫のところに置きに行った。
収集日は木曜だから、それまでに脱出できなければおだぶつだ。
おい。お前。テンコー。
そこで大脱出を演じるなら、やれ。
そして巣に帰ったら、転妻家がいかに恐ろしいところか、
仲間によくよく語り継ぐんだぞ。
私だって、もともと殺生はしたくないし、
親のない子をこれ以上増やすのだってイヤなのだから、
転妻家には決して近づくなと、
一族の大人にも子供にも伝えるのだ。
きょうの昼、薬屋の防虫コーナーのポスターを見ていたら、
うちのテンコーは「黒ゴキブリ」という種類だとわかった。
本州で見かけるヤツのうちでいちばんサイズの大きいゴキ。
こいつらは屋外から家の中に侵入するのだという。
あっちこっちの壁に割れ目のある官舎では、
ゴキ男を閉め出すことは金輪際無理だと私は悟った。