廿日市文化センターさくらぴあで、近藤嘉宏のピアノを聴いた。
前半がシューマン「アラベスク」、ベートーヴェンのソナタ「月光」、
ドビュッシーの「月の光」「亜麻色の髪の乙女」、
リストの「愛の夢」「ラ・カンパネラ」。
後半がオール・ショパンで「夜想曲変二長調」「嬰ハ短調(遺作)」、
エチュード「別れの曲」「木枯らし」「黒鍵」、
「幻想即興曲」、「英雄ポロネーズ」。
アンコールが「夜想曲第2番変ホ長調」と「子犬のワルツ」。
近藤氏の演奏を生で聴くのは初めてだったが、
安定した技巧と正統的な解釈とで、とても気持ち良く聴けた。
ただ、弱音の使い方が私の期待したものとは違っていて、
ホールの広さを加味して大きめの音で弾いているのか?
と最初は思ったが、相対的に音が大きいというのではなくて、
やはり、私の思うピアニシモと、この人の使うピアニシモは
音色が違うということだろうと、最後まで聴いてわかった。
初心者でも耳に馴染んでいるような曲を中心にしたコンサートで、
アンコールまでその主旨は貫かれていたし、
しかも拍手が続いていても最後は二曲で切り上げたところなど、
客席の雰囲気を巧みにつかんだ、程よい演奏会だったと思う。
また、全体を通して、曲と曲の合間は、
律儀に拍手する観客の反応に目礼などで応えつつも、
続けて弾きたいところは拍手が起こっても立たずに始めたり、
構成に関する近藤氏の主張もはっきりしていて潔かった。
終わって、会場を出て駅へ向かう道を歩いていたら、
私のうしろから来た女性が、連れの人に、
「私、第二部の曲、全部弾けるんよ」
とハッキリした声で言うのが聞こえた。
『私は桐朋首席の近藤嘉宏に匹敵するほどピアノが巧い』
と自慢したいということか、それとも、
『私でも弾ける曲で演奏会をするなんてボッタクリだ』
と抗議したいということか?