英語・裏街道2 | 転妻よしこの道楽日記

転妻よしこの道楽日記

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松本道弘氏の随筆を某機関誌で見かけ、
とても懐かしい気分になった。
今も変わらず、独特の「英語道」を提唱されていて、
その含蓄のある文章を、幾度もなぞるように読んだ。

私は二十代の一時期、この松本氏の著作に傾倒していて、
「英語道」セミナーを受講したことがあった。
場所は確か、池袋の某ビルの会議室。
当日提示されたTIME誌の、映画関連の娯楽記事を題材に、
グループごとにそれを紹介する「番組」をつくる、というのが課題だった。
TIMEは英語だが、番組は日本語でも英語でも、両方でもよかった。

当時、私はひょんなことから学校放送研究の仕事に関わっていて、
自分でも朗読やナレーションの研修を受けたりしていたので、
番組の構成なんて願ったり叶ったりの幸運だった。
限られた打ち合わせ時間だったので、
グループの皆で役割分担をどうするか話し合ったとき、
とにかく私が日本語で話を振って、回しますから、
皆さんは記事の紹介をやって下さいね、と決めた。

他のグループは凄かった。
記事の概略をリレーのように英語のみで紹介したグループもあったし、
記事をテーマに英語による徹底討論を展開したグループもあった。
私は、自分がそんな恐ろしい人たちと同じテーブルになっていなくて、
本当に良かったと心中密かに胸をなで下ろしたものだった。

私たちの番が来た。
キューが出て、私はとびきりの笑顔をつくり、
「皆様、こんばんは。本日は皆様を映画の世界にご案内致します」
私が司会、あとの皆が映画評論家の先生方という設定で、
司会は日本語しか出来なかったのだが(^_^;、
メンバーの皆が、あまりにも素晴らしかった。
ろくな打ち合わせもしていないのに、
私が振ったら誰も彼もが打てば響くのテンポでコメントをくれた。
英語日本語チャンポンの我がグループの発表は、
最後にちゃんと秒読みもやって締め括ったので、ピタリの時間で終わった。
拍手のあと、松本氏が私を呼び止めた。
「あなた。仕事、何やってる人?」

これが私の、あまりにささやかな自慢話だ。
松本道弘氏の目に留まったのは、私の英語ではなく、「喋り」(爆)。

きょう読んだ氏の随筆の中に、
同時通訳者の西山千氏が、
『気迫』は英語で何と言うのかと問われて、間髪入れず、
「知りません、今は日本語で考えています」
と返答された、という逸話が書かれていた。
こういう答えが本当に迫力をもって他を圧倒するとは、
その道の達人というのは実に見事なものだと恐れ入った。

私には一生言えない台詞だろうな。