馬主をしていると必ず遭遇するものに所有馬の故障があります。


競走馬はレースによって多少なりとも消耗するため、消耗すること自体は仕方のないものと考える必要があると思っています。


競馬のダメージは馬によって異なるものの、それを次の競馬に向けてケアしてくれている人(主に厩務員さん)がいかに馬を把握しているかで消耗からの回復、回復からのコンディションアップが違ってきます。


いわゆる中間と言われるもので、競馬と競馬の間にどんなことが行われているかは大事なことです。


また別の観点から見ると、自分も含めて馬主というものは放っておくとどんどん頭数が増えるものです。

初めのうちは頭数が少ないので馬が疲労してもすんなりと休ませることができますが、気付くと頭数が増えていて競馬場で走っている馬よりも休養している馬の方が多い、、という状況に陥りがちです。


良くどんどんハマり込んで行く様を「沼」と表しますが、沼に浸かって喜んでいるようではいけません。

しっかりと視界を確保しておいた方が良いですよね。


昨今は休養牧場の預託料も高くなっていますので、競馬場やトレセンにいない状態の馬とどう付き合うかがマネジメント上は大切になってきます。

※いつも通りの注釈ですが、超お金持ちはこんなことを考えなくても良いのです。趣味と実益を兼ねて長く馬主を続けたい方にお読み頂ければ幸いです。




先日のブログで続戦を予定していると書いたシンボリノエルですが、実は競馬のあと厩舎から連絡があり球節が硬くなっているので休養を相談されました。


JRAで昨年から10走もしてくれた馬ですので、勿論休養は快諾して早速千葉にある牧場に放牧に出たのですがここで問題になるのは状態の把握です。


厩舎としては柔らかい表現でしたが、球節というとほとんどが種子骨周りの異常になります。

症状で言えば繋靭帯炎、種子骨靭帯炎など競馬を使っていれば宿命のように痛める箇所です。


厩舎から出る時にはまずまず腫れた状態でした。



(牧場到着1日目)

(牧場到着2日目)

先に書いたように競走馬はレースで必ず何らかのダメージを負います。

ノエルはどちらかといえば競馬で力を出し切る方ですので、競馬の直後は馬体がガレた様に見せる馬です。


しかしこれは競走馬としては立派なことで、競馬でしっかり走って一次的には疲れますが中間馬体を戻して次に向かうという回復力も備えています。

経験的に毎回しっかり結果を出す馬ほど、レース後は心配になるくらい消耗するものです。


ただ今回の左前球節の状態は牧場到着1日目の写真の通りかなり大きくなっていて、外側の靭帯が炎症していました。

これは次に向かって立ち上げていくのに時間を要するため、厩舎にいるよりも一段階落として休ませる方が良いとの判断で連絡があったということになります。

逆に考えれば今までも球節周りは上がりで問題になることはあったが厩舎でケアしてくれていたということですね。


牧場に着くとすぐに状態把握に入り、故障箇所を特定して貰います。

獣医の手配もしながら患部を水冷して湿布します。


到着2日目には結構腫れが引いていることから、この処置で問題ないことを確認しながら獣医の往診。


診断としては軽度の繋靭帯炎でした。

これはほぼ予想通りなので、今度は立ち上げに向けての方針と中長期的な方向性を考えていきます。


土田先生は2月末で引退ですので、可能ならあと一戦土田厩舎で使いたい。

その後、次の厩舎に引き継ぎながら再度目標を定めていきたいというのが「あくまでも馬主サイドの希望」なのですが、それに馬がついてくるかで修正していきます。


こちらが競馬を使いながら休養する時の話です。


無理すれば競馬には使えますが、ここは休ませた方が馬のためになり、ひいてはそれが関わる人のためにもなってくるという考え方です。




次にこちらは昨年オークションで購入した馬の脚元です。


南関東でかなり活躍した馬ですが、かなりの損傷率の屈腱炎になり売りに出されていました。

(まだ治療途中でどうなるかわかりませんので馬名は改めて書きます)


普通なら買わない状態なのですが休む前の内容が魅力的だったので一か八か、というか上手くいく可能性は25%くらいと思って買いました。

どうしても上手く行かない時は損切りして乗馬クラブに譲渡したりします。

リスク承知で安く買っていますので、ここは割り切っています。


エビは一概には言えませんが、保つ保たないは腱の損傷箇所やその馬のバランス、若さなど色んな要素があります。

勿論やってみないとわかりませんが、この馬は箇所だけはいけそうな感じがしていました。


屈腱炎だと復帰まで少なくとも1年は覚悟するのですが、休養丸3ヶ月で試しに患部のエコーを撮ってみました。

この時の腱繊維の埋まり方が獣医も驚くほどで、これならPRP(血小板血漿注入)を試みても良いのではないかと提案されました。いわゆる再生医療です。


ポイントはPRPをやったから埋まるのではなく、埋まり方が早い=細胞の生命力が強いからPRPで成長因子を注入してさらに修復効果を高める、という順番で考えることなんだと思います。

これも治療を進めてみないとわからないことです。


現在休養5ヶ月目での状態が上の写真です。

腱自体はすっきりしていて熱感もありません。


早ければ今月末には馬場で乗り出して貰い、上手く行くようなら兵庫で復帰を試みます。


南関東でも良いのですが、気持ち相手が落ちるのと820mを選んで使える分で兵庫にしました。

兵庫なら転入したクラスで通用しなくても徐々にポイント修正で降級しますので、次第に足りてくることもあります。

転入はA級なのでここで足りれば余裕で休養した分のコストも回収できますしさらにアップサイドも見込めます。

もしダメでも走力の6〜7割戻ればC級なら足りてくるので丸損にはならないという感じです。


私は時々オークションで故障している馬を買うのですが、適切な治療をすることでほとんど復帰させることができます。

(その代わり気は長く持たないといけなくなります)


言い方は難しいのですが、理に適った故障というようなものがあります。

例えば若い馬は膝周りなどの腕節の骨が弱いので、2歳や3歳で膝を骨折している馬がいれば古馬になって問題なく競馬を使えることが多いなど、考えればわかるタイプの故障馬もいます。


そういう馬を治療中の休養分も馬代金の一部と考えて買うというわけです。


お知り合いの休養牧場がいれば買ってから復帰までを一緒に話しながらやってみるというのも馬主の経験値を上げてくれると思います。




馬ですので中々上手くいかないことは多いのですが、基本的に休養は馬を良くしていくための投資にならないといけないと思います。

上手な馬主さんは馬の出走間隔を焦らなかったり、馬体が仕上がるまで我慢するということをやっている方が多い印象です。

日本の競馬の場合、出走さえすれば手当が出ますがそれだけでプラスにするというのは簡単ではないですし、やはり基本的には所有する馬を強くすることでより賞金を獲得するというのが大切だと思います。

故障や休養を前向きなものにしながら、所有馬を強くしていく。
難しいことですが勉強しながらやっています。