サマーセールの間に少し書いた馬の持ち方が変わってきたという事と、それに伴って価格も変わってきた話をちょっと掘り下げてみたいと思います。
つらつら書いているネタですので気楽にお読みください。
昨年、今年とサマーセールでは個人馬主さんから馬を買いづらくなったという声が良く聞こえてきました。
馬の市場に何が起きているのでしょうか。
余程お金持ちが増えているのでしょうか、はたまた新規の馬主さんが増えて馬の需給バランスが崩れているのでしょうか。

色々な要素を踏まえて推測するに、一番大きな原因はステルス馬主の顕在化と共有の増加ではないかと思います。
順に説明します。
現在馬主登録されているのはJRAだけで約3000名なのですが、うち1頭持ちしているのは10%位だと言われていました。
※正確には2026.1月現在で個人、法人、組合を合わせて2,991件だそうです。
残りの馬主さんは社台オーナーズや知人の馬の持ち分を少し持って免許を維持しています。
これを席だけ馬主とか、ステルス馬主とか言っています(呼称は沢山あるようです)。
アメリカやオセアニアといった世界と比べて、日本は元々ワンホースワンオーナーで1人で持つケースが多いということがあります。
半持ちという50%ずつ2名で持つケースは結構多いです。
これは共有馬主名が馬主欄に載らないのも1つの要因だと思います。
それがこの数年、複数の馬主で共有するパターンが増えてきました。低予算の人が1頭買うためということではなく、予算の比較的多い人があえて共同購入するという例です。
1人予算が3000万円あれば、5人で600万円×5頭買う、といったイメージです。
特定のメンバーで購入、共有するのでいわゆるオーナーズとは違います。
この方式のメリットとしては考えられるだけでもいくつかあります。
①リスク分散
②バイイングパワー増強
③厩舎など関係者に対しての影響力増加
などです。
①と②は分かりやすいのですが、個人的には③が大きいのではないかと考えています。
前述しましたようにJRAでは1頭持ちの馬主さんは少ないので、毎年1〜2頭の新馬保有では発言力が弱く(と思っている人が多い)、ある程度の影響力を持つにはそれなりの馬質でそれなりの頭数が必要になります。
クラブの影響力が大きいのはこれがあります。
これを生み出していくには1人1人で戦うよりも、予算感が似ている人同士が複数組んでグループ買いしていくのが同じ金額を出すならパフォーマンスが上がるのではないか、ということですね。
③を目的にオペレーションしていると①②の効果もより上がってくることが期待されます。
例えばですが、Aという厩舎と関係を深めるために共同購入したそれなりの価格の馬を入れて、充分に関係ができれば(もしくはエラーが発生すれば)次のB厩舎にまたそうした馬を入れるということも戦略上やりやすくなります。
こうしたグループ買いが増えることで、馬主免許は持っているがその人の名義では走らないという方が徐々にセリに参加し始めて来ていることにもなります。
では次にこの買い方にはデメリットはないのか、を考えてみます。
共同して馬を購入する場合に問題になるのは、共有者全員がその馬を買うことに納得するかどうかです。
考えてみれば当たり前ですが、種、母系、サイズ、売主など納得できるポイントが多ければ多いほど共有者の賛同は得やすくなります。
セリの事前ピックアップでも得点の高い馬が選ばれていきます。
これはオーナーズにも共通することです。
これらを突き詰めていくと、極端な話セレクトセールで買いたい!となるわけです。
セレクトが無理ならセレクション、サマーセールと目線を移していきます。
現実的にはサマーセールで良い馬を狙う(1500〜2500万円位でしょうか)が、グループ買い層の目線とした時のボリュームゾーンになってきます。
サマーセールで「良い馬」というのはだいたい下記の要素を複数満たした馬になります。
・実績のある種牡馬
・牡馬
・体高あり450kg以上
・知られている生産牧場
・調教師のOKが出る
これらの要素を存分に満たすほど、共有を念頭に置いた馬は買われやすくなっていきます。
これを私は、excuse point (イクスキューズポイント→言い訳ポイント、ep)と呼んでいます。
※勝手に名付けているだけで公式な用語でもなんでもありません笑。
epの高い馬は購入時の納得感が高く、簡単に言えば文句を言われにくい馬になります。
またもし走らなかった時もみんなが納得したのだからと言い訳が少なくて済みます。
共有する馬、オーナーズで販売する為の仕入れ、クラブ募集馬など、他者資本を念頭に置いた馬ほどepが高くなる傾向にあります。
知らない種馬の産駒だと売りにくいわけですから、これも考えれば当然ではあります。
先程のデメリットの話に戻ると、epにこだわりすぎると仕入れ目線が硬直化すると個人的には思います。
サマーセールには約1400頭上場されていましたが、epの高い馬を仮に上位20%とすると、毎日50頭前後の馬達を予算の高い馬主とグループで争っていたことになります。
これだと個人馬主は良いと思う馬が常に想定の上で決着するというセリが続くことになります。
1人の予算では仮に800万円までで買おうと思った馬が1000万円を越えたらやめますが、グループなら欲しいと思えば他でバランスを取れば良いのでアクセルを踏める、ということが起きてきます。
この上振れの幅は金額が高いほど大きくなると思われますしね。
こういった様なことが数多くセリの現場で発生していたのが今年のサマーセールだったのではないかなと色々と見ていて感じました。
※念のための付記ですが、こうした買い方を全く否定するものではありません。
他者の評価を考慮した仕入れ、買い物というのは金融業でも不動産業でもそれ以外の業界でも当たり前に行われています。
個人馬主には厳しいセリではありますが、自身のチームを頼りにこうした目線を少し外した馬をピックアップすることで馬を探しやすくすることができるのではないかと思います。