まだ2月ではあるのですが、お産シーズン真っ只中となっております。


当牧場ではすでに10頭以上産まれておりまして、種付けも10頭以上行っています。


よく牧場の方々が「お産と種付けで忙しい」と言われているのを聞いたことがあると思いますが、具体的にどんな業務をしているのか書いてみたいと思います。





お産は基本的には予定日があり、その前後に産まれるのですが繁殖牝馬の見せる分娩兆候を見て助産していきます。

勿論突然始まることもあります。

お産が近いと思われる繁殖牝馬はカメラ付きの馬房に移動して監視態勢をとるのですが、牧場の業務は朝早くから夕方までで一旦一段落するので、一般的な夜の時間(19〜24時くらい)が従業員としては一番眠い時間であり案外ここが見づらい時間になります。
そこで私がよくこの時間はモニターを見ています。笑

分娩の助産は破水から分娩、起立、初乳を付けるところまで順調なら3時間程度でおわります。

2時間だとすごく早いですね。


つまり夜中の24時に始まれば終わるのは3時くらい、明け方に始まればそのまま朝になります。


これは安産であった場合でして、難産や産まれた仔馬に問題があればさらに時間が掛かります。




次に種付けです。


種付けは大きく分けて、前年空胎や競走上がりの繁殖と、産んだ後再度種付けする馬とがいます。

前者を「空胎とかシングル」、後者を「仔付き」と言ったりします。


牧場が世話する繁殖牝馬の頭数にもよりますが、基本は空胎を早目に付けておき、妊娠鑑定を待ちながら仔付きの種付けに備えるという感じで捌いていきます。


種付けのタイミングは獣医による直腸検査(いわゆる直検)で定めていきます。

子宮内の卵胞の存在を確認し、生理周期に沿って卵の成長を追っていき、最終的に種付けに至るというジャッジが出たらスタリオンに種牡馬を予約します。

概ね1〜2日後の種付けを予約することが多いです。


この予約が一大事です。


社台スタリオンや特定の種牡馬(例えば今年ならアメリカンファラオなど)は種付け予約が殺到しますので、事前に予約をしていてもいざ付けるという段階になるとまた話が変わってきます。


予約の電話をしても即答はされず、2日後の予約なら翌日まで待ってほしいとか、時間も確定しません。


これがまだ1頭の予約ならスタリオンから連絡待ちして時間を合わせられるから良いのですが、場合によっては1日に2頭、3頭の種付けが重なります。


種付けの優先度もあります。

例えばこのAという種馬は押さえたいとなれば、Aの種付け予約をまず確定させないとBCの予約にかかれません。

ギリギリまでAを引っ張られてもBCの予約を空いている時間に取るには候補をどうするか、二手三手とプランを頭に描きます。


他にも馬運車が重ならないようにしたり、どのスタッフを行かせるか、人が抜ける時間の牧場作業や獣医の往診時間や来客なども考えて差配していきます。

(元々私は牧場の人ではないのですが、できるようになってしまいました。)


スタリオンの場所も重要です。

1日に複数頭入った時は行けるかどうかの動線も考えないといけません。

2頭まとめて同じスタリオンに連れて行くために1頭は配合変更する、なんていう日もあります。

人気種牡馬とマイナー種牡馬を組み合わせて、暇な(失礼ですが)種牡馬には時間を合わせて貰ったりもします。


とはいえ牝馬の卵のタイミングの良い時に付けてやりたいですので、優先度が高いのは牝馬の体調です。


希望通りの種牡馬を希望通りのタイミングで種付けし、受胎して分娩、その仔馬がまともに育って競馬場に行くのは奇跡だと思います。

それでも全てにおいて理屈はあり、できるだけその確率を高めるために牧場の技術研鑽があるわけです。







スタリオンに連れて行くと、ほとんどのスタリオンでは繁殖牝馬(母馬)は持ってくれますが仔馬は牧場で押さえるというのが一般的です。


このように親仔を2頭引っ張って連れていきますが、種付け中は仔馬を押さえないといけなくて産まれたばかりなら良いのですが2〜3ヶ月も経つと押さえるのもひと苦労になります。


そんなこともあり、なるべく効率良く1回で受胎させたいと思ってやっています。


相手が生き物ですので難しいこともありますが、結局は1頭1頭の繁殖や仔馬をきちんと管理することで事故を未然に防ぎ、正常な飼養管理を行うことができます。


当たり前を当たり前にやるのがとても大切で難しいことなんですね。


各馬の無事を祈りつつ今夜もお産の番をしています。