27日火曜にはセレクションセールが行われました。


売却総額、平均価格、中間価格いずれもレコードという一言で言えば高いセリでした。


セレクションセール2021 結果レポート 


売却率86%で平均価格1807万円とは、すごいの一言です。

このセリの評価については他に任せるとしまして、今回は馬代金の考え方について書いて行きます。

セリシーズンが始まり、良く聞かれるテーマでもありますのでまとめてみたいと思います。


馬を買うに当たっての予算というのは、無論人それぞれです。
高い、安いという感覚も十人十色です。

セレクト、セレクションセールであれば1000万円でも安いでしょうし、サマーセール以降のセリであれば平均価格の半分以下なら安いのかも知れません。

セリで安い馬を探して当てたい、という誰もが一度は夢見ることを考えたら安いというのはどの位でしょうか。

ここではサマーセール以降のセリを例にとって考えてみたいと思います。
あくまで個人の見解ですが、価格を考える上でご参考になれば幸いです。


①500万円以下

初めて参加するセリの予算が500万円まで、出来れば300万円位で買いたいという方は多い印象です。

3年ほど前は日高のセリは500万円あればかなり選んで買えました。
しかし近年では以下のどれか1つにでも当てはまる馬は500万円で買いづらくなりました。

・種付料100万円以上の種牡馬産駒
・地方競馬リーディング20位以内の種牡馬産駒
・体高155以上、管囲19.5以上の牡馬

予算500万円で2歳夏デビュー出来たとすると、JRAでデビューまで約800万円、南関東で約700万円程度の費用です。

この費用で考えるとJRAでは未勝利馬券圏内、南関東なら古馬Bクラスが目標になるかなという感じです。
JRAでは勝つに超したことはありませんが、未勝利戦の内容によってはペイすることもあると思います。

個人的にはJRAならダート1800mをこなせる牝馬を狙いたいと思う予算です。
地方に狙いを絞れば種馬にさえこだわらなければ探せる感覚。


②200〜300万円

このゾーンは本来非常にニーズが高く、デビューまでで500万円という予算の方が多い価格帯です。

南関東の新馬補助金を活用したい方も多いです。

ここでは以下のような「やや敬遠される、嫌われるポイント」を持つ馬が対象になってくるかと思います。

・体高152以下の小柄な牝馬
・遅生まれ(一般的には5月以降)
・公表事項、術歴または悪癖持ち
・主要スタリオンに繋養されていない様なマイナー種牡馬産駒

これらはあくまでもセリの時に減点材料になることが多い項目で、だからといって走らないということでは勿論ありません。

目をつぶること、許容することが出来ればお買い得な場合もあります。
但しやはり気を付けなければいけないことも多くなります。

例えば悪癖の1つである旋回癖は、多くは嫌われますが程度により問題の度合いは変わってきます。

馬房に入った時に2〜3回回る程度の馬でも、一晩中回っている馬でも表記上は旋回癖です。
充分に馬格がある馬は問題にならなくても、小柄な馬だと馬体を減らしてしまいコンディションキープが難しくなったりします。

馬体が小柄(一般的には競馬で420kg以下)というのは、仕上がりの早さだけを考えるならプラスになる場合もありますし、遅生まれでもデビューを待ってやれる人であれば追い付く場合があります。

ただこれも、初めて馬を買う方や初めて1頭持ちする場合、初めての育成牧場に預ける場合、早期デビューを目指したい場合などは基本的にはやめた方が良いと個人的には思います。

ビハインドを背負った馬にチャレンジする場合は、育成牧場や厩舎といったチームとリスクを共有するのが前提で、そうでないと成功率は下がってしまうことが多いです。


③200万円未満

こちらは細分化すると150〜200万円と150万円未満に分けられると思っています。

前者は②の延長線上ですが、サマーセールで後者になるとほとんどがレポジトリー異常か、脚向きやヒザ付きの悪い馬、極端に小さい馬になってきます。

このクラスになると素人では太刀打ち出来ないと思った方が良いでしょう(勿論私も無理です笑)。
自前で育成施設を持っていたりしないと厳しいと思います。

オータムセールになると②の馬でも100万円位になったりしますが、色々と制約が付きます。

私自身は100万円以下の馬を買った経験は何度もあり上手くいったこともありますが、失敗したことも多々あります。

レポジトリーに欠陥がなくてこの価格帯の馬は、例外なく小さいです。
こういった馬は化骨不良か成長不良を起こしていることが多いので、最低限半年は待ってやる必要があります。
2歳中にデビュー出来れば良いと思って進めていきます。

するとJRAは厳しくても南関東で意外にやれる場合もあるのですが、やはりハンデは背負っていますので天井は来ますし、安く買った馬でも育成費は同じように掛かるわけですから良く考えてチャレンジする必要があります。


と、こんな具合にセリの予算は考えられるのですが大事なのはここからです。

私は馬主というのは続けることに意味があると考えています。
毎年続けるからこそ厩舎や牧場といった人の繋がりができて、チームができます。
このチームこそが馬主にとっての経営資源であり、強みになります。

この経営資源がないうちは正直中々大変です。
自分だけは上手くやれると考える馬主さんがいたとしても、そう上手くはいきません。
これは歴史が証明しています(笑)

また馬はその馬単体の収支を意識はすれども、単体だけで損得を測ることは難しいものです。
何頭、何年もの積み重ねが経営資源を豊富にし、やがて自身の代表馬と言える馬に巡り合う、ということができれば幸せだと思います。


先のセレクションセールは本当に高いセリだったのですが、相場が高い時に予算を上げてしまうのが正しいかと言えば正しくないと思います。

JRAは一部の重賞を除き賞金は上がっていません。
入厩のハードルは上がり、出走回数は減る傾向にあります。

対して地方は賞典費が軒並み上がっています。
しかし地方競馬に向けた馬を1000万円以上出して買うのはリスクがあります。

セレクションセールは平均価格が約1800万円でしたが、毎回平均して2000万円の馬を買われる馬主さんなら問題ないと思います。
試行回数1にかけるコストが同じであればいつも通りです。

ただ普段500万円の馬を買われる馬主さんが、「相場が高いから」という理由で2000万円出すのはあまり良くありません。
試行回数1にかける平均コストを押し上げてしまいます。

自身が1頭の馬に掛ける平均的な予算がどれ位かを意識することで、目標設定を明確にすることが可能になります。

私自身を例に取れば、地方競馬ではそれなりに経営資源が蓄積されて来ているので経験を積むだけのステージは脱していて可能な限り重賞路線を目指すことを目的にしています。
重点項目としては南関東と兵庫、金沢。

対してJRAではまだまだ経験を積むステージのため、思い切った投資をせず試行回数を重ねていきます。
目指せ1勝ですが未勝利でも損をしない馬、マル地も積極的に入れていきます。

こんな感じなので馬代金予算は地方>JRAになります。
あくまで個人的に目的を整理すると、ということです。



キュアップラパパ
浦和で頑張っています。

自身の新馬では最安値のオータムセール50万円。
母マジュスキュールはJRA勝ち馬で、上には2勝馬もいますがセリでは小さくて目立ちませんでした。

母父サウスヴィグラスなので地方であればと望みをかけました。
2着が2回あるのでもう少し、この馬で南関東勝利出来たら爽快です。



レディヴィクトリア
こちらはJRAです。

母レディブライアンはJRA4勝ですが高齢(18歳時出産)なのと、セリ当日は痩せて貧弱に見えたのかサマーセールで210万円でした。

4勝馬の仔は中々買えませんのでもう少し出すつもりでいたのですが安く買えてしまった馬です。

セリ参加前に牧場の方に食べるのに苦労するタイプですか?
と聞いたところ、
「自分の牧場では良く食べます。環境変化で飼い葉が落ちたのかも」
と教えてくれました。

育成、入厩後もその通りで、環境が変わった数日は飼い葉が落ちる(というか食べるのが遅くなる)のですがここで無理をさせなければ食べる様になります。

7/31函館2Rに出走予定です。


セリでは目立たなくて安い馬でも、自分なりに楽しめる馬はいます。

サマーセールは長丁場で見るのも大変ですが、スタイルを崩さずに頑張りたいと思います。