東京馬主協会の会報にオーナーリレーエッセイというコーナーがあります。

9回目に登場していたのが金子真人さんでした。

金子さんのオーナーとしての活躍は誰もが知るところで、種牡馬になっている馬だけでもディープインパクト、キングカメハメハ、クロフネ、ブラックタイド、ラブリーデイ、サイレントディールなどまさに日本の競馬界の主流血統はすべて持っている方です。

オーナーとして目標(途方もないですが)とする方ですので、興味深く読みました。


エッセイのタイトルは『私流の競馬の楽しみ方』

紙面をそのまま載せるわけにもいきませんのでポイントを書くと、

◎初めて馬を買ったのはセレクトセールが始まる数年前のノーザンファーム

◎その時の購入馬は当歳牝馬5頭

◎いわゆる馬係(マネージャー)は置かない

◎馬の選び方は欠点を先に省き、バランスと血統の良い馬

◎ディープインパクトは兄ブラックタイド(ものすごく馬体が良かった)の弟なので買うことは決めていた

という内容でした。


一つずつ見ていくと、まずノーザンファームと出会ったのはセレクトセールが始まる前だったということです。

セレクトセールは1998年に始まったので、数年前というとおそらく1994〜1995年頃ではないでしょうか。

今でこそ常勝のノーザンファームですが、この時代はまだ社台ファームの後を追っていました。
ダービー初制覇も1999年のアドマイヤベガでした。
この時代にノーザンファームと出会い、創成期のセレクトセールを支えたことで強い結び付きが生まれたものと思います。

その時に買われたのが牝馬5頭だったというのは意外でした。
昔の牧場は特に新しい馬主には牝馬を売らないことが多かった(繁殖をされると仔馬を売りづらくなる)のですが、この頃はすでに時代が変わりつつあったのか、金子さんが牝馬を望んだのかまでは書いていませんでした。


馬選びのポイントはまずはとにかく数を見ること。

金子さんは現在でも馬係を置かずにご自身で馬を見ているとのことで、数を見ることで馬の欠点というものがどんなものか分かってくると書いています。

これはとても納得の行くことで、私などまだまだ経験も足りませんがそれでも自分なりに馬の見方を考えて、とにかく数を見ることは大切だと思います。

馬主を始めると、そのきっかけがどういうものかにもよりますが結構な割合の方が馬を見る、買うという判断を他者に任せています。

馬に乗れるわけではないですので、脚向きなど大切なポイントについて育成や調教師の意見を聞くことは勿論大切なのですが、馬を見ることについては分からないなりに自分で考えて感じるものを得ていくことが大切なのではないかと思っています。


ディープインパクトについては、他でも語っていらっしゃるのを聞いたことがありますがまずブラックタイドの馬体をとても気に入っていることから始まるんですよね。

こんなに良い馬がいるのか、という程惚れ込んでいたブラックタイドを前年購入されていたことで全弟のディープインパクトは可愛らしい感じの馬でしたが絶対に買うと決めていたとのことです。

これは先の馬体の選び方で惚れ込んで買った馬の全弟ですから、理屈抜きに買おうと思っていたんだと思います。
全然規模は違いますが、これも理解できるポイントです。


金子さんは先週のクイーンカップ、ミヤマザクラまでで通算重賞91勝。

未勝利戦一つ勝つのも大変なのに本当に途轍もないことだと思います。

今はノーザンファームに支配されていると言っても過言でない競馬界ですが、ノーザンファームを支配している数少ないオーナーではないでしょうか。

競馬ファンの時代から金子さんの馬を見て来て、この方は競馬に対してとても良い間合いを持っているんだろうなと思っていました。

根底にあるのは競馬を楽しむという気持ちで、気に入って買った仔馬が成長し、競馬場で活躍するのを応援するというのを楽しみにしていてここがブレていないのでしょう。

馬主は時として見栄を張ったり、自身の力を誇示するために馬を買うことがあります。
儲けようと思ってやっても、短期的な視点では上手くいきません。
(かと言って絶対に損をするかと言えばそれはそんなことはないです。)

私も競馬は楽しんでやりたいと思っています。
そこは絶対に譲りたくないところです。

大馬主が実践している馬主ライフを研究(?)させて頂き、自分なりの馬主活動を確立したいと思います。



金子オーナーの所有馬で好きだったホットシークレット。JRA育成馬だったんですね。