唐突ですが、馬主のススメを書いてみたいと思います。
私は常々競馬を好きな人にこそ、馬主になって競馬に関わって貰いたいと思っていて、小規模ながらこれから馬主になりたい方などにアドバイスをしています。
そんな活動から、私なりに考えることを書いていこうと思います。

前提として、一口クラブを否定する立場ではない事をお断りしておきます。
私自身も一口馬主を楽しんでいますし、一口が良いとか悪いとかの議論ではないのです。

それではまず、馬主というと世間的にはどんなイメージでしょうか。

・金持ちの道楽
・ボンボン
・なんか分からないけどいけ好かない

などなど、全体的に金満家の様なイメージがあるのではないでしょうか?
(ごめんなさい、私が貧乏人の出身なので 笑。)

上記の例は極端としても、やはり馬主というのはとても大変なイメージがあるのかなと思います。

これらのイメージを分析していくと、なぜ馬主は金持ちでなければならないのか?
という疑問にぶつかります。
私も始め、それが不思議でした。

これの答えは、第一にそもそも馬の価格が高いというものがあります。
では、馬はなぜ高いのか、私は考えました。
馬の原価というものは下記の数式で算出可能です。

馬の原価=
種付料+妊娠期間中繁殖牝馬飼養料+生後〜売却時仔馬飼養料+医療費+セリ費用(コンサイナー)+血統的価値(α)+馬のデキ(β)

実際に会計上の棚卸の際などには、この数式から資産価額=簿価を算出していきます。
αとβについては会計上、加味されません。

つまり、仮に1歳7〜10月のセリ期間に売却されることを想定すると、種付料3000万円のディープインパクト産駒なら原価で3300万円程、種付料300万円のハービンジャー産駒なら600万円程がセリ時点での「原価」になります。

と、ここまでは割と簡単にお分かりになると思います。

問題は血統的価値(α)と、馬のデキ(β)が原価にオンされて、馬の価格が跳ね上がることです。

血統的価値というのは、きょうだいや近親が活躍しているといったいわゆる「ブラックタイプ」に拠るものと、ノーザンファーム産などの「売主ブランド」によるものがあります。
分譲マンションで、野村のプラウドや三菱地所のパークハウスが高いのと全く同じ原理ですね。

続いて、馬のデキというのは、「セリの時点で」の馬の立ち姿、歩様、性格と言った加点評価対象、脚向き、レポジトリー、さく癖や旋回癖などの悪癖と言った減点評価対象を加味して決まります。
馬のサイズ感を測る測尺は加点、減点両方の要素があると言えます。

馬の値段というのは購入者側が良いと思えば幾らにでもなり得る世界ですので、原価に関係なく上記のα、βによってどうにでもなってしまう。
かくして、セレクトセールなどでは毎年◯億円馬が誕生します。
因みに、セレクトセールでは出身馬の統計が取られていて、1,750〜2,500万円のレンジの取引馬が一番コスパが良い、という調査結果が出ているのですが、セレクトでこの辺りの価格帯の馬は「メディア的に地味」なのであまり話題にはなりません。実際にはこの価格帯で買ってJRAの1000万下まで進めれば大プラスなのですが。

話を元に戻します。

私の様な零細馬主が馬を買う場合には、まず限りなくその馬の原価に近い所で購入することを心掛けます。
具体的にどうしているか。
まず購入候補の馬自身をあくまで単体として評価し、次に先に述べた馬の原価計算部分の、αとβとどう付き合うかを考えれば良いと思っています。

αで良くあるのは、きょうだいが走っていることですが一頭の繁殖牝馬から活躍馬が毎年出るということは実は非常に稀なケースです。
私は上のきょうだいの競争成績は一切気にしません。しかし、上の兄姉がデビュー出来ていない場合は、その理由を尋ねて体質的にマイナスの遺伝が無いかを確認します。

続いてβですが、先に馬をあくまで単体で評価すると書きました。
馬は見る際に、これだけはやめた方が良いと言う幾つかのポイントがあります。
順に例を挙げると、
・レポジトリーで喉が悪い馬
・レポジトリーで骨に異常、変形のある馬
・レポジトリーで化骨に遅れがある馬
・脚向きで内向、かつ度合いのひどい馬

になります。
購入時にはその他の基準をお持ちの方もいらっしゃると思います。

随分とレポジトリーという言葉が出てくるなとお思いになったかと思いますが、レポジトリー(セリの際に提供されるレントゲン、内視鏡検査画像)は非常に大切です。
馬の根本に関わる部分ですので、これをきちんと見ると「致命的な間違い」は避けられます。

馬の評価はほとんどの方が立ち姿や歩様、毛艶などの外見で判断します。セリなどでの購入時、あまりこの外見を重視しすぎると、高い馬を買うことになってしまいます。
競走馬はレースに出られないとその役割を果たせませんので、まず第一に「壊れない馬」を購入することが大切です。そしてそのバリューは必ずしも価格に反映されない場合があると言うことです。

このように、可能な限り馬のバリューに対して過度な投資を避けて購入することが出来れば、その馬は価格以上に活躍することが期待できます。

購入した馬は数人で所有することによって維持費を分担することが可能ですし、牝馬なら繁殖に上げて代々血統の繋がりを楽しむことも可能です。
地方馬であれば2〜5名位で共有すると金額的なバランスも良いと思います(JRAなら10名でも)。

なぜ、こう言ったことを私がブログに書くかというと、馬主になるのは決して金持ちだけではなく、それ以上に大切なのは競馬を好きな気持ちだと思うからです。
競馬を好きだからこそ、馬の見方についても真剣に勉強出来るし、身が入ります。

そう言った気持ちを持った方を応援して、仲間を増やしていきたいと思います。
競馬が本当に好きで、馬主にも興味がある方、いつでもご連絡下さい。

馬を持つのが大変だと言うのは、こうしたことが知られたら困る人達のデマゴーグですので(笑)。

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※門別競馬場のある日の表彰式風景。
馬はその適性によって様々な場所で走ります。