先日、知り合いから

「rbsctさんは、ピアノを弾くときに譜面通りに弾きますか?」

と聞かれました。

一瞬、意味がわからなくて固まってしまった私を前に

「私は結構耳で聴こえたように弾いちゃうんで、譜面通りに弾かないことが多いんですよね。」

と続けたその人は、ちょっと得意げに見えました。

 

思い出してみれば、子供の頃に先生から

「譜面通りに弾きなさい。余計なことをするのはそれが出来てから。」

と言われ、とても疎ましく思っていたことがありました。自分にはこんなに表現したいことがあるのに!と。

「譜面通りに弾く。」

これが当たり前のことだと気が付かない文字通りの子供でした。譜面は、作曲者と演奏者をつなぐ唯一の存在であるのに、それを無視して良いわけがないということすらわかろうとせずに、譜面を本気で読み込むことをしませんでした。

 

「私は、譜面通りに弾けるようにいつも努力しているつもりですよ。」

と答えた私に、きょとんとしてしまった知人。

「プロの人は、皆、譜面通りに弾いています。人によって違って聴こえるのは、譜面が違うからではなく、解釈の違いだと思うんです。」

さらにきょとんとさせてしまいました。

とりあえず譜面に書いてあることを全部やってみる。まずはそこから。だから、信頼できる譜面を入手する必要がある。

 

先日、我が家のバイオリン弾きの先生がバッハのコンチェルトのレッスン中に

「何百年も前の人が書いた黒いインクの印がこんな素敵な音楽に変わるなんて、すごいことだと思わない?バッハ自身のレコーディングは残っていないけれど、バッハはこの印を残した。この印からバッハが奏でたかった音楽を見つけて、お客さんに伝えるのが私たちミュージシャンの仕事だと先生は思うのよ。だから、しっかりバッハの残した印を見なきゃ!」

 

ああ、なんて素敵な言葉だろう。すべては譜面にあるのです。

 

 

 

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