昨日、我が家の小さなバイオリン弾きがパフォーマンスを前にこう言いました。

「間違えたらどうしよう。」

曲が十分に仕上がっていなく、不安でいっぱいの彼。頭の中には「間違えたらどうしよう。」が渦巻いているのでした。

 

私も同じ。演奏会の前はいつも「間違えないように、音を外さないように、完璧に弾くこと」ばかりを考えてしまう。しかしそれは演奏会の前に考えなくてはいけないことではないと思う今日この頃。もちろん間違えずに完璧に弾ければベストです。そしてそういう技術面での不安がない状態まで自分の演奏を確実なものに準備していくのがベストで、当然のことだとも思います。ましてやコンクールならば、ミス一つで終わってしまう。でも、それがゴールになってはいけないと思うのです。

「自分の奏でる音楽を聴衆に自分の言葉で伝えること。」

これが本番前に一番考えなくてはいけないことだと強く思う今日この頃。

 

「間違えたらどうしよう?」と言ってきた彼に思わず「間違えてもいいんじゃない。」と言ってしまった私。

「今日の君の演奏を聴いた人が、「かっこいい曲だなあ、私もこの曲弾いてみたいなあ」と思うように弾いてみたら?」

特に深く考えずに言った言葉でしたが、自分に大きく跳ね返ってきました。

そういう気持ちで本番に臨めれば、自分一人で演奏するのではなく、聴衆に語りかけることができる。私自身、その気持ちをもって演奏会に臨みたいと思いました。

 

「間違えないように弾くこと」を考えながら弾いている演奏は、内包的で自己完結でつまらない。でもこの壁を破ることはとても難しいことだとつくづく思いました。