またしても政権投げ出し、政治の責任自覚せよ…読売政治部長
またしても、政権が投げ出された。昨年の安倍前首相の辞任から1年もたっていない。
なぜこのタイミングなのか。8月に内閣改造を断行し、就任後初めて自前の内閣を作ったばかりだ。改造はこの体制でいずれ衆院解散に打って出るというメッセージと、多くの人が受け止めたはずだ。
もっとも、冷静に分析すれば、とても首相の手で解散できるような状況ではなかった。内閣支持率は改造効果もなく低迷を続けた。自民党だけでなく連立相手の公明党からも「福田首相では選挙は戦えない」との声が半ば公然と聞かれるようになった。衆院議員の任期が残り約1年となる中、与党内の「福田離れ」が急速に進んでいた。
辞任の理由について首相は、新しい体制での政策実現の必要性を強調した。確かに、政治空白を最小限に抑えるためには、臨時国会召集前のこの時期が最善だったのかも知れない。
しかし、景気低迷をはじめ内外に難題山積の中での今回の辞任劇のダメージは計り知れない。
「4年堅持できないような人は(首相に)ならないほうがいいです。1年間を全力投球でやりますなんて言う人は駄目ですよ」
3年前に出版された対談本での首相の言葉だ。福田政権が1年と持たなかった今となっては、その言葉も空しい。昨年7月の参院選以来続く「ねじれ国会」の中で、日本政治の「失われた1年」が過ぎ、なお出口が見えてこない。
後継首相が速やかな解散を迫られるのは間違いないが、野党第1党の民主党は選挙に追い込むことを最優先にして政策論議を拒否すべきではない。日本の針路を見すえた論議を真剣に戦わせるのが政党のあるべき姿だ。政治全体の責任が問われている。(政治部長・赤座弘一)