ヒトの寿命とされる41歳まであと3.5年と相成った.
 顧みると,波乱に充ちていた.三十代を折り返して,やっと,人心地がついた.
 村上 龍が若い時分というのは過酷だと指摘していたが,同意する.
 大学卒業前後で大半の個体が自らの手牌が苦戦を強いられるものだと認めざるを得なくなる.
 降りるのが得策だという命題が頭をもたげる.それは蠱惑的だ.だが,違和感を拭いきれない.
 生きるのか死ぬのか迷いながら,狩りを続ける.
 そうやって,ヒトは自らに辿り着くのだろう.

 おれが生き残ったのは,悪運が強かっただけ.恵まれていた.

 『消費社会の神話と例外』は,28歳の頃に書いた.これから3.5年以内に,電子書籍という形でこれまでに創ったものを放出してゆくが,若い頃の作品には『消費社会の神話と例外』と同系統の作品
が少なくない.
 「いつか破滅してしまうのでは」という恐怖をおれは作品として外在化・対象化することによってそれらを骨抜きにしていたのかもしれない.

 どんな手牌だろうが,役満の望みが皆無だろうが,切に生きてみたらいい.降りるのはいつだってできる.
 おれはいまあんな手牌でも降りなかった若い頃のじぶんを労えるようになった.
 早死にしたかったのは,屈折してしまわない自信がなかったから.
 屈折してしまわないと不惑の声が聴こえてきても決して断言できないが,和了の望みは充分にある.
 若い頃のじぶんから受け取ったbatonをふいにしたくない.