ジョン王 (ウィリアム・シェイクスピア著 白水Uブックス) その9
フィリップとピーターが登場した。フィリップはジョン王にピーターのことをポンフレットの町から連れて来た予言者だと紹介した。そしてこの男は次の昇天節までに陛下が王冠を引き渡すことになるという内容の歌を数百人の群衆にむかって歌っていたと告げた。ジョン王がピーターに理由を聞くと「必ずそうなると予言したからです」と答えたので王は激怒した。ヒューバートにこの男を牢に入れて予言の日の正午に処刑するように命じ、看守に預けたらここに戻って来るように言った。ヒューバートはピーターを連れて出て行った。
ジョン王がフィリップに「誰が上陸したかを知っているだろうな」と聞くと彼はフランス軍が上陸したこと、ペンブルックとソールズベリーが王のもとを離れたこと、アーサーが王の指示によって殺されたことを知っていた。王はフィリップに貴族たちをここに連れ戻して欲しいと依頼した。彼は頼みを承諾して駈け出して行った。王は自分と貴族たちの伝令になるように使者の一人に命じた。
そこにヒューバートが戻って来た。ジョン王は「人間は悪事をおこなうための道具を目にすると、つい悪事をおこないたくなるものだ。俺が自分の気持ちを漠然と伝えたときにおまえが頭を振ってくれれば、俺は深く恥じて計画を放棄していただろう。俺の良心と俺の甥の死とが戦っているのだ」と告げた。その言葉を聞いたヒューバートは「陛下と胸のうちの良心との和睦は私が引き受けます。アーサー殿は生きておいでです」と答えた。アーサーが生きていることを聞いた王は喜んで、貴族たちのもとへ行ってそのことを知らせてくれと命じた。
第四幕第三場は城の前だ。城壁の上にアーサーがいた。彼はここにいて死ぬよりは逃げようとして死ぬほうがましだと呟いて、城壁から飛び降りて絶命した。
ペンブルックとソールズベリーとビゴットが登場した。枢機卿パンダルフから届いた手紙のことを話していた。その手紙を届けたフランスのメルーン伯爵によると皇太子のルイが彼らにかなり好意を持っているということだった。
フィリップがやって来て、彼らにジョン王がすぐに会いたいと望んでいることを伝えた。彼らはその要求に応じるつもりはないと答えた。彼らが会話を交わしているときにソールズベリーがアーサーの遺体を発見した。彼らはアーサーの死に悲しみを覚え、ジョン王に対する怒りに震えた。
そこにヒューバートが出て来て「諸卿、お探ししていました。アーサー殿は生きておられます。急ぎ陛下の前へ」と言った。その言葉を聞いたソールズベリーは怒って剣を抜いて「殺しておきながら、厚顔で破廉恥な奴だ。法律にかわって俺が成敗してやる」と叫んだ。ペンブルックとビゴットも彼に同調した。
ヒューバートは自分が人殺しではないと弁明した。彼の弁明を聞いたビゴットが「では誰がこの王子を殺した」と問い詰めた。それでようやくヒューバートはアーサーの遺体に気がついた。彼は「別れてから一時間と経っていません。この方を愛し、尊敬していました。そのお命が失われたとは、一生泣き暮らしても泣き足りないでしょう」と言った。ソールズベリーは「この男が流す空涙など信用はできんぞ」と吐き捨て、ビゴットとペンブルックとともにフランス皇太子のもとへ向かって去って行った。
フィリップはもしおまえが殺したのなら地獄中を捜してもおまえのような悪魔はいないだろうと責め立てた。ヒューバートは自分が手を下したのではありませんと答えた。フィリップは彼にアーサーの遺体を抱き上げてジョン王の御前に行くように命じた。