闇に消えた怪人   グリコ・森永事件の真相   (一橋文哉著 新潮文庫) その1 | 岩崎公宏のブログ

闇に消えた怪人   グリコ・森永事件の真相   (一橋文哉著 新潮文庫) その1

1984年(昭和59年)3月18日

江崎グリコ株式会社の江崎勝久社長が兵庫県西宮市にある自宅で入浴中に三人組の男に誘拐された。これが戦後の犯罪史で初めて「劇場型犯罪」と形容されることになったグリコ・森永事件の発端だった。今日は事件からちょうど25年になる。一橋文哉氏の「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」(新潮文庫)で、この事件を検証したいと思う。

事件に関与した可能性が高いと推測される65歳の男性を北陸のある都市へ訪ねて一橋氏が面会するプロローグからこのノンフィクションは始まる。

第一章の「敗北」では事件で犯人を逮捕できなかった原因を分析している。江崎社長の拉致事件に端を発した事件は、翌日に高槻市の公衆電話ボックスで身代金10億円、金塊百キロを要求する脅迫状が発見されて営利目的の誘拐事件だということが明確になって報道管制が敷かれた。社長が拉致された翌日の朝刊には事件についての記事が掲載されたのに、21日に社長が監禁されていた水防倉庫から脱出するまで、報道がなくなったことを覚えている。

犯人グループは4月10日にはグリコの本社に放火、4月22日には「かいじん21面相」と名乗って挑戦状を送りつけた。以後はこの名称でマスコミなどに挑戦状を送り続け、犯行を予告したり、警察やマスコミを嘲笑したことが「劇場型犯罪」と形容される所以となった。

一橋氏が警察の幹部や捜査員に捜査の敗因について聞いたときの返答の内容からそれを以下の三つに集約している。犯人の一網打尽に上層部が拘ったこと、公安警察主導の捜査になり秘密漏洩防止を重視したので、事件現場の情報や犯行動機を重視する捜査一課的な手法を採用しなかったこと、犯人グループが残した大量の遺留品の捜査が全く進まなかったことの三点だ。


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