妄想タイム
正門side
【昔のことやけどな、実は俺たち…】
と言いながら、末澤センパイは周りを確認し始め
いつもと比べ物にならないほどの小声で話し出した
【俺たち、一緒に住んでたことがあってん】
センパイの言葉が衝撃すぎて、空気が完全に固まった
『ハッ、えっ?やっぱお付き合いされてたんですか?』
【やっぱってナニよ?!ちゃうって、そっちちゃうよ】
【俺が子供の時に親が離婚して、俺はオトンについたんやけどな、そしたらオトンが◯◯さんの母親と付き合うようになって】
【入籍はせずに、内縁って形をとって一緒に暮らすことになって】
【そのとき、あの人はもう20歳ぐらいで、俺は中学入りたてで、実際に一緒に生活したのは2年ほどやったけど】
【まぁ、ざっくり言ったら、姉ってとこやな】
【まさか同じ会社で働くことになるとは、偶然て怖いわー(笑)】
【あ、誰にも言ったらアカンからな】
俺は頷くのが精一杯だった
でも振り返れば、末澤センパイは◯◯さんの言うことには素直に従ってたし、話してるときも穏やかな顔してた
色々合点は行ったけど、俺は今日、どんな顔して◯◯さんと話したらエエんやろ?
定時を過ぎた途端に、急に緊張してきた
まずは話さなきゃ!怒っているなら直ぐに謝らなきゃ!
タイミングを見計らって、残業していた◯◯さんの机にお菓子を置いた
ありがとうと言いながら振り向いた顔は驚いていた
『末澤センパイに聞いたんです、◯◯さんの好きなお菓子』
『こうでもしないと喋る機会がないと思いまして…』
『あの、僕、なにか失礼なこと、しちゃいましたか?』
と問いかけながら覗き込んだ
◯◯さんは少し微笑みながら、僕の目を見て頭を横に振った
『良かったー、怒ってらっしゃるのかと思って内心ドキドキしてて、僕の思い過ごしでした』
『お仕事中、お邪魔しました、スミマセン』
と言ってその場を離れようとしたら
【ゴメン】の声と同時に手首を捕まれた
それは、俺が話し掛けてから、初めて◯◯さんが発した言葉だった
続く
