ポップとアートの波間に揺れる
アンバランス全開のロック
アメリカNY出身のバンド、ヤー・ヤー・ヤーズが今年4月にリリースしたばかりの3rdアルバム。
ヤー・ヤー・ヤーズは2003年にデビューした比較的新しいバンド。日本ではあまり売れていないので、認知度は高くないのだが、デビュー・アルバム『Fever To Tell』と、06年にリリースした2枚目『Show Your Bones』がともにゴールド・ディスクに認定され、またメディアや評論家からも高い評価を獲得している、2000年代を代表するロック・バンドの一つである。
このバンドは編成が特徴的で、ドラム・ギター・ボーカルの3人組という、ベース不在のバンドである。先天的にアンバランスな彼らのロックは、抽象画のように猥雑であり、いびつである。
だが、パワフルなドラムを叩くブライアン、地鳴りのようにノイジーなギターを弾き倒すニック、そして鳥居みゆき似の、危険な香り漂うフロント・ウーマンのカレンと、3人の強い個性が爆発することでポップさを失わせない。
特にボーカル・カレンの存在感が強烈で、永久に埋まらない欠落感や居心地の悪さ、そういった現代的な不安を、その真っ赤に塗られた唇から時に激しく、時に静かにシャウトする。前衛性とポピュラリティを並立させているところは上質の現代アートのようであり、とてもインテリジェンス溢れるバンドである。
そしてこの3枚目、『IT’S BLITZ!』。おそらくヤー・ヤー・ヤーズにとって大きな転機となる作品ではないかと思う。今作では第4の楽器としてシンセイサイザーがほぼ全曲にわたって取り入れられ、曲調はニュー・レイヴ的なダンサブルなものへと変化を遂げたのである。アナログからデジタルへの180度の方向転換であり、この変化はかなり唐突な印象を受ける。
1枚目と2枚目のアルバムでは、基本的にドラムとギターとボーカルだけを武器として、いかに従来のバンドとは違うサウンドを構築するかに主眼が置かれていた。3人がてんでバラバラな方向に個性を発揮し、離れ離れになった3人を頂点とするいびつな三角形が、これまでのヤー・ヤー・ヤーズだった。だが、シンセ導入による重層的な電子サウンドが、この三角形という平面図形を立体化し、空間的な残響感をもたらしている。
今までのような、いかにもNYアンダーグラウンドといったスカスカで薄汚れた感じは無くなり、ヨーロッパ的なスノッブで官能的なサウンドに近づいた感じだ。おそらくここが賛否の分かれるところだろうと思う。
だが、カレンの切羽詰ったボーカルも、ノイジーなところも相変わらず健在である。シンセによる恍惚とした安らぎの音と、彼ら本来の不安な音とが交互に波となって押し寄せる。
この妙なリズム感ははっきり言って気持ちがザワザワとして落ち着かないのだが、この「なんとなく居心地の悪い感じ」は、紛れもなくこれまでのヤー・ヤー・ヤーズが追い求めてきたテーマと同一の地平上にあるものだ。そう感じられるからこそ、僕はこの『IT’S BLITZ!』を好意をもって受け取っている。
<ZERO>を演奏するヤー・ヤー・ヤーズ。シングル・カットもされたこの曲は、アルバム中もっともポップな仕上がり
アンバランス全開のロック
アメリカNY出身のバンド、ヤー・ヤー・ヤーズが今年4月にリリースしたばかりの3rdアルバム。
ヤー・ヤー・ヤーズは2003年にデビューした比較的新しいバンド。日本ではあまり売れていないので、認知度は高くないのだが、デビュー・アルバム『Fever To Tell』と、06年にリリースした2枚目『Show Your Bones』がともにゴールド・ディスクに認定され、またメディアや評論家からも高い評価を獲得している、2000年代を代表するロック・バンドの一つである。
このバンドは編成が特徴的で、ドラム・ギター・ボーカルの3人組という、ベース不在のバンドである。先天的にアンバランスな彼らのロックは、抽象画のように猥雑であり、いびつである。
だが、パワフルなドラムを叩くブライアン、地鳴りのようにノイジーなギターを弾き倒すニック、そして鳥居みゆき似の、危険な香り漂うフロント・ウーマンのカレンと、3人の強い個性が爆発することでポップさを失わせない。
特にボーカル・カレンの存在感が強烈で、永久に埋まらない欠落感や居心地の悪さ、そういった現代的な不安を、その真っ赤に塗られた唇から時に激しく、時に静かにシャウトする。前衛性とポピュラリティを並立させているところは上質の現代アートのようであり、とてもインテリジェンス溢れるバンドである。
そしてこの3枚目、『IT’S BLITZ!』。おそらくヤー・ヤー・ヤーズにとって大きな転機となる作品ではないかと思う。今作では第4の楽器としてシンセイサイザーがほぼ全曲にわたって取り入れられ、曲調はニュー・レイヴ的なダンサブルなものへと変化を遂げたのである。アナログからデジタルへの180度の方向転換であり、この変化はかなり唐突な印象を受ける。
1枚目と2枚目のアルバムでは、基本的にドラムとギターとボーカルだけを武器として、いかに従来のバンドとは違うサウンドを構築するかに主眼が置かれていた。3人がてんでバラバラな方向に個性を発揮し、離れ離れになった3人を頂点とするいびつな三角形が、これまでのヤー・ヤー・ヤーズだった。だが、シンセ導入による重層的な電子サウンドが、この三角形という平面図形を立体化し、空間的な残響感をもたらしている。
今までのような、いかにもNYアンダーグラウンドといったスカスカで薄汚れた感じは無くなり、ヨーロッパ的なスノッブで官能的なサウンドに近づいた感じだ。おそらくここが賛否の分かれるところだろうと思う。
だが、カレンの切羽詰ったボーカルも、ノイジーなところも相変わらず健在である。シンセによる恍惚とした安らぎの音と、彼ら本来の不安な音とが交互に波となって押し寄せる。
この妙なリズム感ははっきり言って気持ちがザワザワとして落ち着かないのだが、この「なんとなく居心地の悪い感じ」は、紛れもなくこれまでのヤー・ヤー・ヤーズが追い求めてきたテーマと同一の地平上にあるものだ。そう感じられるからこそ、僕はこの『IT’S BLITZ!』を好意をもって受け取っている。
<ZERO>を演奏するヤー・ヤー・ヤーズ。シングル・カットもされたこの曲は、アルバム中もっともポップな仕上がり