見た目に惑わされると
損しちゃいます
大阪出身の3ピースバンド、ザ50回転ズが今年の1月にリリースしたアルバム。この『50回転ズのビックリ!!』は、『50回転ズのギャー!!』、『50回転ズのビリビリ!!』に続く3枚目のアルバムで、現時点での彼らの最新作にあたる。
アルバムタイトルの“濃さ”からもわかるように、ザ50回転ズはかなり強烈なキャラを持ったバンド。なんだか「イロモノ」「キワモノ」のように見えてしまうけど、どっこい彼らの鳴らすロックはものすごく骨太で痛快。かっこいい。
メンバーは、徳島の酔いどれ「ダニー」(ギター)、出雲の妖怪「ドリー」(ベース)、浪速のドラ息子「ボギー」(ドラム)。・・・いやあ、ふざけてますね。ふざけてますがアルファベット横文字の芸名よりはるかに光るセンスを感じます。ボーカルは基本ダニーが担当するが、曲によってドリーもメインを張る。
曲は典型的ガレージロックンロール。彼らの髪型の元ネタ、ラモーンズばりの時短ナンバーを、3コードでひたすらぶっ飛ばす。と思いきや、歌メロは昭和歌謡っぽかったりして、ダニーの拳を利かせた歌い方と相まって、その妙に演歌的なところがこのバンド独自の持ち味になっている。
だが、どんな曲でも使用する楽器はギター1本にベースとドラムだけ。小細工なしの“裸一貫”型だ。それでいて音が薄っぺらくならず、むしろ圧倒的な音圧を感じさせるのは、彼らの演奏能力が非常に高いことを物語っている。切れのあるディストーション・ギターが連発する「いかにも」なリフには、彼らのロック・マニアぶりも伺える。
聴けば聴くほど、ロックンロールの原初的な勢いみたいなものを感じさせる、非常に稀有なバンドである。そう、まさに「バンド」という感じ。3人の強烈なビジュアルも、いつの間にかカッコいいファッションのように思えてくる(こないか?)。
それにしても、「いかにも大阪出身のバンドだなあ」と思う。ウルフルズ、ミドリ、そしてザ50回転ズ。彼らに共通するキャラの強烈さだとか、新しさだとか、イっちゃってる感じだとか、そういうのは良くも悪くも“常識的”な東京ではなかなか生まれないセンスだと思う。
これは実は小劇場演劇にも当てはまることで、新しい芝居、強烈な芝居、というのは大体西からやってくる。たとえば劇団☆新感線とか惑星ピスタチオとか、最近だと劇団鹿殺しとか。好き嫌いは抜きにして、やっぱり大阪出身の劇団は何かしら強烈なオリジナリティーがある。俳優さんも関西出身の人の方がクセがあるように思う。
アングラ的。サブカル的。大阪カルチャーには概して地下発生的なアヤシさがある。だがそれがアングラの陰気さやサブカル特有の狭量感につながらないところが大阪の面白いところだ。むしろどこか陽気でユーモラス。アヤシさと言っても、ガード下の飲み屋とか長屋だとか、そういう濃厚な生活の匂いを感じさせる、人情味のあるアヤシさなのである。そこが東京文化圏には希薄な大阪独自の“濃さ”であり、僕自身もひと頃大阪のそういうノリに憧れたことがあった。
もちろん関東関西どっちが優れているかとかそういう問題ではないし、それを言い始めると、九州とか名古屋とか北海道とか、また違った個性を持つ文化圏についても考えなきゃいけなくなるのだが、とりあえず、日本という小さな国のなかに、音楽とか芝居とか、そういう肌で感じられるレベルで風土の違いがあるということは、単純に面白い。東京が全てのカルチャーの発信地のように言われるけれど、決してそんなことはないのである。
損しちゃいます
大阪出身の3ピースバンド、ザ50回転ズが今年の1月にリリースしたアルバム。この『50回転ズのビックリ!!』は、『50回転ズのギャー!!』、『50回転ズのビリビリ!!』に続く3枚目のアルバムで、現時点での彼らの最新作にあたる。
アルバムタイトルの“濃さ”からもわかるように、ザ50回転ズはかなり強烈なキャラを持ったバンド。なんだか「イロモノ」「キワモノ」のように見えてしまうけど、どっこい彼らの鳴らすロックはものすごく骨太で痛快。かっこいい。
メンバーは、徳島の酔いどれ「ダニー」(ギター)、出雲の妖怪「ドリー」(ベース)、浪速のドラ息子「ボギー」(ドラム)。・・・いやあ、ふざけてますね。ふざけてますがアルファベット横文字の芸名よりはるかに光るセンスを感じます。ボーカルは基本ダニーが担当するが、曲によってドリーもメインを張る。
曲は典型的ガレージロックンロール。彼らの髪型の元ネタ、ラモーンズばりの時短ナンバーを、3コードでひたすらぶっ飛ばす。と思いきや、歌メロは昭和歌謡っぽかったりして、ダニーの拳を利かせた歌い方と相まって、その妙に演歌的なところがこのバンド独自の持ち味になっている。
だが、どんな曲でも使用する楽器はギター1本にベースとドラムだけ。小細工なしの“裸一貫”型だ。それでいて音が薄っぺらくならず、むしろ圧倒的な音圧を感じさせるのは、彼らの演奏能力が非常に高いことを物語っている。切れのあるディストーション・ギターが連発する「いかにも」なリフには、彼らのロック・マニアぶりも伺える。
聴けば聴くほど、ロックンロールの原初的な勢いみたいなものを感じさせる、非常に稀有なバンドである。そう、まさに「バンド」という感じ。3人の強烈なビジュアルも、いつの間にかカッコいいファッションのように思えてくる(こないか?)。
それにしても、「いかにも大阪出身のバンドだなあ」と思う。ウルフルズ、ミドリ、そしてザ50回転ズ。彼らに共通するキャラの強烈さだとか、新しさだとか、イっちゃってる感じだとか、そういうのは良くも悪くも“常識的”な東京ではなかなか生まれないセンスだと思う。
これは実は小劇場演劇にも当てはまることで、新しい芝居、強烈な芝居、というのは大体西からやってくる。たとえば劇団☆新感線とか惑星ピスタチオとか、最近だと劇団鹿殺しとか。好き嫌いは抜きにして、やっぱり大阪出身の劇団は何かしら強烈なオリジナリティーがある。俳優さんも関西出身の人の方がクセがあるように思う。
アングラ的。サブカル的。大阪カルチャーには概して地下発生的なアヤシさがある。だがそれがアングラの陰気さやサブカル特有の狭量感につながらないところが大阪の面白いところだ。むしろどこか陽気でユーモラス。アヤシさと言っても、ガード下の飲み屋とか長屋だとか、そういう濃厚な生活の匂いを感じさせる、人情味のあるアヤシさなのである。そこが東京文化圏には希薄な大阪独自の“濃さ”であり、僕自身もひと頃大阪のそういうノリに憧れたことがあった。
もちろん関東関西どっちが優れているかとかそういう問題ではないし、それを言い始めると、九州とか名古屋とか北海道とか、また違った個性を持つ文化圏についても考えなきゃいけなくなるのだが、とりあえず、日本という小さな国のなかに、音楽とか芝居とか、そういう肌で感じられるレベルで風土の違いがあるということは、単純に面白い。東京が全てのカルチャーの発信地のように言われるけれど、決してそんなことはないのである。