彼らが一番輝くのは
ライヴ・ステージの上
約1年ぶりの登場、ザ・フーです。
前回『マイ・ジェネレイション』と『セル・アウト』を紹介したときにも書いたけど、このフーというバンドのおもしろさは、レコーディングではスタジオに籠もりあらん限りの音楽的アイディアを実験するマッド・サイエンティストばりの“オタク”な面を見せ、片やライヴになると、聴覚が狂うほどの大爆音を放ち(かつてギネスに「もっとも大きな音を出すバンド」として認定されたこともある)、機材を片っ端から破壊してしまう超肉体系に打って変わるという、この極端な触れ幅にある。
だがフー自身がどちらを本当の自分たちだと考えていたかというと、少なくとも70年代初頭まではライヴであった。キース・ムーン(ドラム)は「最高のレコードを作るのではなく、最高のライヴをやって、それをレコードに詰め込むんだ」と語っている。実際、ライヴから彼らは人気を広げていったのであり、あの圧倒的なパフォーマンスはフーというバンドのパブリック・イメージを作った。
そのフーのすさまじいライヴを録音したのが、この『ライヴ・アット・リーズ』だ。彼らが残した唯一のライヴ盤というだけでなく、ロックのライヴ・アルバムの歴史のなかでもとりわけ評価の高い1枚である。
収録日時は1970年2月14日。場所は英ウェスト・ヨークシャー州にあるリーズ大学。大学というアカデミックな場所で、フーという大物の、それもお世辞にも行儀が良いとはいえないバンドがライヴをしたなどとは妙なことに感じるが、欧米では珍しいことではないようだ(リーズ大学では翌71年にローリング・ストーンズもライヴを行っている)。写真を見るとかなり小規模な会場だったようで、その環境のせいか、録音状態が非常によく、40年前という遠さを感じさせない。
選曲も非常に良い。発売当初の収録曲はわずか6曲のみだったのだが、95年にリリースされた「25周年エディション」では、新たに9曲が追加収録された。カバー曲が中心だったオリジナル版よりも、オリジナルのヒット曲が増えたことで、ベスト盤と呼んでもいいような内容になっている。合計時間も70分超という大ボリュームになった。
あえて難を言えば、演奏のテンションが高すぎて、70分丸まる聴くと疲れる、ということだろうか。とにかく圧倒的な音の圧力である。これ本当に3人だけで演奏しているのか?と思う。ピート・タウンゼント(ギター)もジョン・エントウィッスル(ベース)も激しくエネルギッシュだし、キースにいたっては、スタジオ盤とは比べ物にならないほど荒れ狂っている。
だが、それぞれがインプロを繰り広げているように見えて、その実一定の範囲を超えてバラけることがなく、むしろ全体的にタイトな印象を持つのが不思議。このしたたかさはいかにもフーらしい。バカはバカでも、ただのバカじゃないのである。セカンドに収録された、8分を超える大作<クイック・ワン>を、ステージ上で再現しているのもすごい。
ライヴ・アルバムというのは、本来生で体感すべきものを半ば強引に音源化したもので、所詮は企画モノの一種であり、マニア向けのアイテムである。だがこのフーというバンドは、スタジオよりもステージの方が演奏がキレるという稀有なバンドだ。こと彼らに関しては、ライヴ盤であってもスタジオ盤と同等の、あるいはそれ以上の価値を持ってしまうのだ。
フーはリーズ大学以外でも、モンタレー・ポップ・フェスティバルやウッドストック、ワイト島フェスティバルなど、あちこちで強烈なライヴを残している。特にワイト島フェスティバルでのライヴは映像化されており、現在僕がもっとも欲しいDVDの1枚である。
ライヴ・ステージの上
約1年ぶりの登場、ザ・フーです。
前回『マイ・ジェネレイション』と『セル・アウト』を紹介したときにも書いたけど、このフーというバンドのおもしろさは、レコーディングではスタジオに籠もりあらん限りの音楽的アイディアを実験するマッド・サイエンティストばりの“オタク”な面を見せ、片やライヴになると、聴覚が狂うほどの大爆音を放ち(かつてギネスに「もっとも大きな音を出すバンド」として認定されたこともある)、機材を片っ端から破壊してしまう超肉体系に打って変わるという、この極端な触れ幅にある。
だがフー自身がどちらを本当の自分たちだと考えていたかというと、少なくとも70年代初頭まではライヴであった。キース・ムーン(ドラム)は「最高のレコードを作るのではなく、最高のライヴをやって、それをレコードに詰め込むんだ」と語っている。実際、ライヴから彼らは人気を広げていったのであり、あの圧倒的なパフォーマンスはフーというバンドのパブリック・イメージを作った。
そのフーのすさまじいライヴを録音したのが、この『ライヴ・アット・リーズ』だ。彼らが残した唯一のライヴ盤というだけでなく、ロックのライヴ・アルバムの歴史のなかでもとりわけ評価の高い1枚である。
収録日時は1970年2月14日。場所は英ウェスト・ヨークシャー州にあるリーズ大学。大学というアカデミックな場所で、フーという大物の、それもお世辞にも行儀が良いとはいえないバンドがライヴをしたなどとは妙なことに感じるが、欧米では珍しいことではないようだ(リーズ大学では翌71年にローリング・ストーンズもライヴを行っている)。写真を見るとかなり小規模な会場だったようで、その環境のせいか、録音状態が非常によく、40年前という遠さを感じさせない。
選曲も非常に良い。発売当初の収録曲はわずか6曲のみだったのだが、95年にリリースされた「25周年エディション」では、新たに9曲が追加収録された。カバー曲が中心だったオリジナル版よりも、オリジナルのヒット曲が増えたことで、ベスト盤と呼んでもいいような内容になっている。合計時間も70分超という大ボリュームになった。
あえて難を言えば、演奏のテンションが高すぎて、70分丸まる聴くと疲れる、ということだろうか。とにかく圧倒的な音の圧力である。これ本当に3人だけで演奏しているのか?と思う。ピート・タウンゼント(ギター)もジョン・エントウィッスル(ベース)も激しくエネルギッシュだし、キースにいたっては、スタジオ盤とは比べ物にならないほど荒れ狂っている。
だが、それぞれがインプロを繰り広げているように見えて、その実一定の範囲を超えてバラけることがなく、むしろ全体的にタイトな印象を持つのが不思議。このしたたかさはいかにもフーらしい。バカはバカでも、ただのバカじゃないのである。セカンドに収録された、8分を超える大作<クイック・ワン>を、ステージ上で再現しているのもすごい。
ライヴ・アルバムというのは、本来生で体感すべきものを半ば強引に音源化したもので、所詮は企画モノの一種であり、マニア向けのアイテムである。だがこのフーというバンドは、スタジオよりもステージの方が演奏がキレるという稀有なバンドだ。こと彼らに関しては、ライヴ盤であってもスタジオ盤と同等の、あるいはそれ以上の価値を持ってしまうのだ。
フーはリーズ大学以外でも、モンタレー・ポップ・フェスティバルやウッドストック、ワイト島フェスティバルなど、あちこちで強烈なライヴを残している。特にワイト島フェスティバルでのライヴは映像化されており、現在僕がもっとも欲しいDVDの1枚である。