色んな方の受験系ブログを拝見させて頂いているが、某中学受験最大手であるS塾の強みについて、分析されている方々がいらっしゃった。
それらによれば、S塾が成功している最大の要因が、受験勉強を「ゲーム化」できたから、というものらしい。
この塾では、学力別にクラスが細かく分かれていて、定期的なテストの結果に応じて、各生徒の教室や席順が頻繁に上下する。
これにより、自分やライバルの学力がわかり易い形で可視化され、まさにゲームスコアでランキングを争うが如く、テストの点でライバルと席次を争うシステムになっている訳だ。
そして、このS塾の名物と言える「大量の宿題」。
これはゲームにおける「デイリークエスト」に相当する。
全てこなすのが極めて困難な程の量だが、逆にそれが
「デイリークエストをこなせばランキングが上がるハズ!」
と思わせることに成功している。
受験勉強は長期間に及ぶため、一般的にはマラソンに例えられるが、小学生に何年も受験のモチベーションを維持させるのはなかなかに酷な話ではある。
一方、このS塾のシステムは短距離走を繰り返し行って順位を競わせる「スプリント型」のシステムになっている。
短期的に見れば、ゲームの如く成績を争うのでモチベーションを維持しやすく、その繰り返しが長期的には受験へとつながるようになっていて、実に理にかなったシステムだ。
このシステムは光と影の両面を生み出す。
成績上位層にとって、このシステムは苦しくも楽しい勉強ゲームになる。
若干の席次変動に一喜一憂しつつも、自分が上位クラスに所属出来ていることが自己肯定感へとつながり、それが更なる勉強への原動力となる。
一方の成績下位層にとって、このシステムの印象は真逆だ。
こなし切れない大量の宿題、なかなか上がらない成績、自分より遥か上にいる成績上位層の存在など、このシステムのあらゆるモノから閉塞感を感じてしまう。
こう考えると問題の多いシステムに見えるが、実は塾というサービス形態の場合、後者の成績下位層の悩みは全く問題にならない。
何故ならば、塾にとって大事なのは、前者の成績上位層の受験結果だけだからだ。
酷な言い方になるが、下位層がどこに受かろうが、塾の商売的には殆ど意味が無いのだ。(これは塾業界全般に関する一般論であり、S塾だけが特殊という訳では無い)
そんな訳で、極めて合理的に出来ているこのS塾の天下はもうしばらくは続くだろう。
このS塾を脅かす存在は出てくるのだろうか?
今後の受験業界の動向に期待したい。