小金井の事をワタクシはちゃんずけで呼んでいた、歳は同じなのだが憎めない男で性格もよかった、ただ容姿的にはお世辞にも格好いいとは言えず女性にはその良さは理解してもらえないタイプの一人だった。
ワタクシ「それで話って何なのよ?」
小金井「レイスリーハン、ヒロミちゃんの事なんやけどな....」
人のいい小金井は言いずらそうだったがワタクシを友達と思い、為を思って打ち明けてくれた、
小金井「ヒロミちゃんな、高校の時に同級生数人に犯されたらしいやわ」
ワタクシ「えっ、そうなの!!、それ誰から聞いただよ?」
小金井は予備校の仲間グループの女性から聞いたらしい、その女性はヒロミの高校の友達に聞いたようだ、ヒロミに高校時代に色々あった事は映画館前での出来事で推察出来たがレイプまでされていたとは若き日のワタクシはショックを受けた、いや実際は当の本人のヒロミの方が心に大きな大きな傷を受けているに違いないのにワタクシはその時に心が未熟でその事を直ぐに受け入れる事が出来なかった。
そして、次の日にヒロミが予備校にやって来た、「いる、いる」とニコヤカに教室に入って来たヒロミ、だがワタクシを含め仲間のグループ全員がヒロミと目を合わせる事が出来なかった、
ヒロミ「皆、どうしたの、何かあったの?」
ヒロミの問いに誰も答えなかった、いや、答えられなかった、勘のいいヒロミだ「ハッ」と全てを理解したように教室から飛び出して行った、皆悪い事をしたかのように下を向いたままだったが小金井が「レイスリーハン!!」と言うと同時にワタクシは立ち上がりヒロミを追いかけた。
予備校中をスミまで探したがヒロミは何処にもいなかった、駅に行き3時間ほど待ったが現れない、今のように携帯電話もない時代だ連絡はそう簡単には取れない、夜になりヒロミの家に電話したが誰も出ない、1週間毎日電話するがコール音が虚しく聞こえるだけだった、名字と電話番号で電話帳(当時の電話帳には住所も出ていた)から住所を探しだし家にも行った、そして度胸を決めてベルを押した、すると中からヒロミの母親が出てきた、ヒロミには似てないが優しそうな人だった、
母親「ヒロミはいないですよ、大阪の姉のところに行ったみたいですよ」
ワタクシ「行ったみたいって、お母さん解らないんですか?」
母親「私、継母だから余り話してくれないんですよ」
ワタクシ「そ、そうなんですか」
ヒロミの事を知ってるつもりでワタクシは何も知らなかった、ヒロミ自身も過去の事や家の事情も言いたがらなかったしワタクシも無理には聞かなかった、目の前から消えてみて初めてヒロミを思う気持ちの大きさと自分の無能さに気付きうちひしがれた。
ワタクシや仲間の前からヒロミが消え3ヵ月が過ぎていた、秋になり受験まで数ヶ月になっていたがワタクシは全くやる気なしで勉強などする気になれなかく、いつものように予備校の側でパチンコをしていると台のガラスにヒロミの顔が写った、振り返るとニコニコしたヒロミが立っていた、
ワタクシ「ヒロミ、帰って来たのか?」
ヒロミ「へへ、レイスリーの顔が急に見たくなって、それとあんたに言いたい事があったからね」
ワタクシ「そうか」
突然現れたヒロミに驚きながら直ぐに言葉が出てこない、取り敢えず場所を近くの喫茶店に移した、
ワタクシ「ヒロミ、あの時はゴメンナ、あの後直ぐに追いかけたんだけど」
ヒロミ「ううん、いいの、もう終わった事だし言わないで」
ワタクシ「そうか、そうだ、お母さんにも会ったんだけど」
ヒロミ「うん、お母さんは私の本当のお母さんじゃないのよ」
ワタクシ「うん、聞いたよ、お母さんから」
ヒロミ「そう聞いたんだ、私が子供の時に本当のお母さんは乳ガンで死んだの、その後、あのお母さんがやって来て私おもいっきり反発したの」
ワタクシ「そうか、そうだったのか」
ヒロミ「それで中学の時から不良の仲間に入ってね、高校の時に他の不良グループに生意気だって....レイプされちゃったの」
ワタクシ「そ、そうか」
ヒロミ「その後に同じグループの仲間からも冷たい目で見られるようになったの、その時あの男が優しくしてくれたんだ」
ワタクシ「あの映画館の時の男か?」
ヒロミ「うん、でも本当は私の事を好きじゃなくてレイプされた女だからって体を目当てで近づいて来ただけだったのよ」
ワタクシ「...........」
ヒロミ「私、本当に死にたいくらいに世の中が嫌になった、そんな時にお母さんが本当に私の事を心配してくれたの、警察に保護された時なんかボロボロ涙流して警察に何回も頭下げてくれた、それを見たら、もう不良辞めるしかないなと思って、スッパリと足を洗った」
ワタクシ「優しそうなお母さんだったもんな」
ヒロミ「うん、だから今は少しずつだけどお母さんと仲良くなるように努力してる」
ワタクシ「良いことだよ、それは、でも、これからどうするんだ、また戻ってくるんだろう」
ヒロミ「ううん、ゴメンネ、もう一回やり直すつもりだけど、大阪のお姉さんのところに行く」
大阪に行ってしまうというヒロミ、ワタクシは何も言う事が出来なかった、
ヒロミ「レイスリー、私思うんだけど親って、有難いよね、私の本当の親でも無いのに心配してくれて、レイスリーのお母さんもアナタの事本当に心配してくれると思うよ、だから大事にしなくちゃ、もう少しで受験でしょ、頑張ってお母さんを安心させてあげて、フフ、私が言えた事じゃないけどねえ」
親に甘ったれたガキだったワタクシには色々な大変な経験をしたヒロミの話す事は重みがあり心へとズッシリと響いた、そんな甘ったれ野郎のワタクシにヒロミを支える事も引き留める事も出来るはずがなかった、そして、ヒロミは大阪に去り彼女の言葉を胸に受験までの数ヶ月間ワタクシは頑張ってどうにか日本一のマンモス大学の日本大学中国文学科に入学する事が出来た、そして、ここからワタクシは新しい仲間たち、そして女とギャンブルにまみれた大学生活を送っていく事になるのだった。
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