喫茶店の有線放送からドーンの大ヒット「幸せの黄色リボン」がながれていた、曲の内容は刑務所からもう少しで出所する男が奥さんに手紙を送る、「もし今でも自分を受け入れてくれるなら樫の木に黄色リボンを結んでおいて欲しい」そして男が旅をして家に帰るが自分では怖くて見る事が出来ない、そこで列車の同乗者に見てもらう、と、そこには樫の木にたくさんの黄色いリボンが結ばれていた、これは実話らしいがその後日本でも「幸せの黄色いハンカチ」として高倉健さん、武田鉄也主演で山田洋次監督で映画になったのは余りに有名だ、もし、この曲がアメリカでヒットしなければ映画もなかった事になる、ヤクザ映画が沈滞してしまい、そんな中から高倉健さんが大役者としての第1歩を踏み出したきっかけとなったのだから世の中は先がわからない。
そんな曲を聞きながら、ヒロミがワタクシに話始めた、
ヒロミ「実はねえ、レイスリーに頼みが有るんだけど」
ワタクシ「えっ、頼み、いや、先に言っとくけどお金はないよ~」
ヒロミ「バッカじゃないの、アンタに金を頼むはずないジャン!」
最近はフィリピーナも使うジャン言葉、実は横浜の若者が使い始め全国に広がったと言われている、フィリピーナからジャンて何なのと聞かれ「ディバー(でしょ~)」と同じだよと何度も答えたもんだ、
ワタクシ「ハハ、まあ、そりゃそうだね、じゃあ何なの?」
ヒロミ「エ、エクソシストに一緒に行ってくれない」
ワタクシ「エクソシストか、そうか、見たいとは思ってたんだよ」
映画「エクソシスト」当時、大ヒットしたホラー映画の代表作の一つだ、
ワタクシ「じゃあ、皆に言っとくよ」
ヒロミ「違うよ、二人で行くんだよ」
ワタクシ「ふたり、と、言うことは、ま、まさか、デートか?」
ヒロミ「馬鹿、ただ、二人で行きたいだけだよ」
ヒロミは珍しく照れていた、じゃじゃ馬とはいえ、そこは18歳の女の娘だ、ワタクシはサキの事を引きずって少し距離を取っていたがヒロミの明るい性格に惹かれていた、だが何故か恋人にしたいとは思っていなかった、だが、あることが切っ掛けで二人の距離がグッと近づく事になる。
ワタクシとヒロミは約束通りに「エクソシスト」を見に行った、映画館の前はトグロ状に人が並んでいる、待ち時間何と5時間、どうしても見たいとヒロミが言うので馬鹿話をしながら並んでいると、リーゼントの少しガラの悪そうな三人組の男たちが通って行く、その中の一人がヒロミを見て話しかけてきた、その瞬間ヒロミの顔が曇ったのをワタクシは見逃さなかった、
男「おっ、ヒロミジャン、久しぶりだな~」
だがヒロミは何も言わなかった、
男「何だよ、何か言えよ、昔はいい仲だったんだからよー」
ヒロミ「うるさい男だねえ!!今はあんたと何も関係無いんだから、サッサと消えなよ!」
男「テメー、誰でもやらせてたくせに、偉そうに言ってんじゃねえよ!、また新しい男加え込んだのか~」
ワタクシはショックと怒りにうち震えていた、
ワタクシ「お前、いい加減しろよ、ヒロミが嫌がってるだろう!」
男「何だオメーわよー、格好つけて出てくるんじゃねえーよ」
ワタクシ「お前最低な男だな、昔の事をベラベラと人前で話すなんてクズ野郎だよ」
相手は3人だが威勢のいいのはこの男だけで後の2人は引きぎみだ、ワタクシは身長170cm以上、高校時代はアマチュアでボクシングをやっていたので160cmもないこの男に負けるはずもない、ワタクシはこの時生まれて初めて人を憎いと思った、ヒロミは過去に色々あったかもしれない、だが、それは単なる過去でしかない、ワタクシ達と一緒にいたヒロミは口は悪いが明るく輝いていた、そしてヒロミが知られたくない過去を人前で暴露するこの男の行為は許せなかった、ワタクシは一発喰らわしてやろうと構えた、だがその時ヒロミがワタクシの前に立ちはだかった、
ヒロミ「いいから、もういいから」
とうっすらと目に涙を浮かべワタクシを止めた、男は「チエッ」と舌打ちをして何やらブツブツ言いながら去って行った。
映画を見る為に並んでいた人達は黙って見ていたが騒ぎが収まると何事もなかったようにしていた、ヒロミは恥ずかしかったのか映画を見る列から離れようと言ったがワタクシは意地でも動くまいと拒否した、
ワタクシ「ヒロミは何も恥ずかしい事も悪い事もしていないだろ、だから正々堂々としてればいいんだよ、逃げる必要なんかないよ」
ヒロミ「う、うん、そうだねえ」
やっと映画館に入り映画が始まった、主人公の首が180度廻るシーンで「キャー」と女性たちの事が館内のあちらこちらから聞こえた、ヒロミを見るとやはり手で顔を覆っていた、ワタクシはヒロミの肩をそっと引き寄せ頭をワタクシの肩にもたれさせた。
映画を見た二人は喫茶店でスパゲッティを食べた、ヒロミは明るく振る舞っていたがワタクシにはそれが演技をしているように見えた、たぶん知られたくない過去をワタクシに知られたのが引け目に感じていたのかもしれない、そう思うと何故か胸が急に苦しくなりヒロミの事がよりいっそう、いとおしい存在になったような気がした、「抱きしめたい」と思ったが口に出来なかった、ヒロミはワタクシの口の周りについたスパゲッティのカスをティシュで拭いてくれニッコリと微笑んだ、そしてワタクシもニッコリと微笑み返した、二人の心と心は繋がったと思った。
ワタクシとヒロミの仲は直ぐに仲間たちの知るところとなった、一番ガッカリしたのは関西弁を使う小金井だった、だが、数週間後にその小金井から呼び出しを受けた、それはヒロミの事だった。
次回に続きます、いつもご訪問頂きまして心より御礼申し上げます。