「フーッ、遠いなあ~」ワタクシは大学にどうにか受かったのはよかったが出席を取る必修の単位を取る授業があり、間に合う為には朝の6時に家を出て東急線の超満員電車に乗らなければならず、往復5時間近く掛かる通学だけでクタクタになってしまった、これから4年間続くのかと考えると気が重くなっていた。
だが更に気が重くなったのは中国文学科のクラスメートに可愛い娘が少なかった事だ、この頃は「将来は中国の時代だ」とやたらと言われ初めていたが、だいたい中国の事を学ぼうなどという女にいい女がいるはずがなかった、「ハ~ッ」いい女がいないとやる気ゼロ、いやテンションがマイナスになってしまうワタクシ、そんな時は大学の側にあるボクシングジムに行きサンドバッグをおもいっきり叩き鬱憤を晴らす、ワタクシは高校時代にアマチュアでボクシングをやっていたのでお金は取られるがジム所属のアマチュア選手として各地の大会に出たりした。
そんな中、何故か男友達ばかりドンドン増えていく、年頃の男が話すのは女と遊びの事と相場は決まっている、だが少なくとも中国文学科にはいい女はいない、と、なるとつい遊びに嵌まる、自然の流れで当時流行りの麻雀をする事なり授業と授業の合間には必ず学校の側の雀荘に入り浸るようになる、だが有難い事にワタクシより強いやつがいなかったので勝ちまくった、麻雀のお陰で4年間アルバイトを殆どする必要はほとんどなかった、その為「自分は博打の才能があるのでは」と勘違いをしてしまった。
大学初めての夏休みに入り男6人女2人で山中湖まで行く事になり汚いバンガローに泊まった、ブスな女二人は既に男友達二人と出来ている、残りのあぶれた男4人は女の娘が集まる場所がきっと有るだろうと思っていたのだが残念ながら調査不足で近くには全くそんなところはなかった、そこで幹事の藍場を皆で責めまくった、
ワタクシ「藍場、なんだよ!いったい何処に女の娘がいるんだよ、話が違うじゃない」
藍場「ヘヘヘ、確かにバンガローがまずかったよね」
鈴木「まずかったじゃあないよ~、バンガローの外真っ暗だよ、何すんだよ!」
取り敢えず飲み物と摘まみはあったものの場が全然盛り上がらない、若い男が集まれば自然と女の話になる、話しているうちに藍場も鈴木もクラスの中に好きな娘がいる事がわかった、鈴木は堀口チエという女の娘が好きらしい、
鈴木「俺、堀口の家の便器になりたいんだ」
ワタクシ「えっ、便器になりたいのか?どゆ事!」
鈴木「ホラ、便器だと堀口のオシッコ飲んで、ウ〇コ食べれるだろ~」
全員「.........(絶句)」
類は類を呼ぶ、変態は変態を呼ぶ、カモはカモを呼ぶ、世の中は広い、こんなところに変態仮面がいたのだった、こんな側にスカトロ野郎がいるとは、ワタクシの友達はどいつもこいつも変な奴が多かったのだ。
何しないままに夏休みも終わり、授業の合間に雀荘とボクシングジムを往復するワタクシだったが、社会人大会に出場する事になった、会長に言わせるとワタクシは「世界チャンピオンの逸材」らしい、ある日プロの4回戦ボーイとスパーリングをする事になった、プロ戦績5戦5勝4KOのジムのホープだ、会長に言わせると「世界チャンピオンの逸材」らしい、世界の逸材がゴロゴロいるジムだった。
ゴングが鳴りフットワークを使い相手の出てくるのを待つカウンター戦法でいくワタクシに対して相手はゴリゴリのファイターだ、肩をいからし左右のフックで攻めてくる、ワタクシは左ジャブを突いて相手を中に入れないようにしていた、だが相手はお構い無しにパンチを振るってくる、だが動きはほとんど読めた、そこにワタクシの狙いすました右ストレートが当たると相手はロープ際までヨロけた、更に右アッパーを打ち込むと相手は前に崩れ落ちた、ダウン、だが彼は「効いていないぞ!」と直ぐに立ち上がり肩で体当たりするようにワタクシをコーナーに詰めて左右フックを打ち込む、さすがにプロだけはあって根性とスタミナそして手数は凄い。
次の回も相手を空回りさせワタクシのペースで進んでいたが、前に前に出てくる相手のプレッシャーでコーナーに詰まった時にバッティング(頭突き)をもらい更に相手のグローブの親指部分がワタクシの右目にグサリと入った、サミングという反則技だがこれは故意だったかもしれない、ワタクシは激痛の為に右目は明ける事が出来ない、そこで会長は異変が起きたと見てストップを掛けた。
暫くしても痛みは取れず近くの眼科にいったが要領を得ず次の日に大学病院に行き見てもらうと網膜剥離と診断された、即、手術をおこない10日ほど入院、これでワタクシのボクシング人生は終わった、密かに世界チャンピオンを夢見ていたが果たせぬ夢となってしまった、この時のスパーリングの相手は後に日本、東洋チャンピオンにまでなったがスピードとパンチ力が無いので世界は無理だろうと思っていたが東洋タイトルは10度ほど防衛した。
もし、この時にこの男とスパーリングしなければと思った事もあったが、この男を恨む事もなかったし、どんな理由であれ、こんなところで消えてしまうのはプロになったとしても所詮は世界の器ではなかったという事だろう、ただ人生というものはひょんな事から変わってしまうことをこの時に実感した、運命はちょっとした事で変わる、この先々に起こるワタクシの人生を暗示していた出来事なのかもしれない。
視力はメッキリ落ちてしまったが生活するのには特に不自由はなかった、ただ少し離れた女性の顔がやたらいい女に見えてしまうのには困った、ある日の事、通学途中に渋谷の駅で小中学校の同級生の大川に出会った、この男はワタクシと違って六大学の一つに受かるほど頭がいい、優しい性格で行動的なところが人に好かれ仲間に慕われていた、久しぶりに会ったワタクシにも気軽に声を掛けてきた、
大川「おっ、レイスリー久しぶり、丁度よかった、授業終わったら麻雀やるんだけど来ない?」
この男も女と遊びには目がなかった、この男と再会した事でワタクシの運命の歯車がまた一つ動きだすのだった。
次回に続きます、いつもご訪問頂きまして誠にありがとうございます。