426.大地に咲く花.2部.10 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
アリサに取っての幸せの絶頂、それは初恋の人である後藤と結ばれる事だった、再会して数ヶ月後になんと後藤はアリサにプロポーズしたのだ。



ワタクシは後藤さんと店でアリサに紹介され会った事がある、彼は大手の総合商社に勤めている国際感覚豊かな人だった、何よりも何事も別け隔てしない、人種に関しても貧富や仕事に関しても彼は全く問題にしない、だからこそ過去のあるアリサにプロポーズが出来たのだろう、(オマケにワタクシの店の支払いまでコッソリしてくれるいい人だ)、ヘラヘラと遊んでいるワタクシなど足元にも及ばない立派な人間だった、彼はアリサを両親にも紹介した、ご両親も全く問題なく結婚する事を喜んでくれたそうだ。


だが二人が結婚するには問題があった、ひとつはアリサがオーバーステイであった事、そしてもうひとつが彼女の出身地がモルドバ共和国だった事だった、もちろんオーバーステイでもちゃん結婚は出来る、そして書類を取り揃えて入国管理局に提出し在留資格認定証明書を申請をすればいいのだがアリサの書類をモルドバから取り寄せるのが難しかった。


アリサは母親と弟がいて毎月仕送りをしていたが、母親には連絡を入れていなかった、自分が異国の地で売春をして得た報酬を母親が喜んで受け取るはずがない、むしろ連絡を取ると心配させてしまうだろう、その為に送金の送り主は敢えて書かなかった、アリサが叔父に12歳の時に売られ7年以上が経っている今、母親や弟、行方不明の父親や姉のレガッタはどうしているか判らなかった。


モルドバ共和国の大使館や領事館は日本にはない為に問い合わせが出来ない、しかし後藤が同じ会社の友人が隣国のウクライナに駐在していた、彼に頼み込みモルドバのアリサの家族を探して貰うことになった、友人に連絡を取ってから2週間が過ぎ「家族が見つかった」と電話があった、有難い事に友人が母親と一緒に役所に行って書類を集め後藤に郵送という事だった。


アリサは飛び上がって喜んだ、母親が生きていて所在がハッキリしたのだから当然だろう、しかし他の家族は一緒には暮らしてはいないようだった、書類が届いた事で二人は日本では結婚が出来るようになった、後藤は「何れはモルドバに行かないといけないね」と言いアリサはそれに嬉しそうに頷いた、後藤は二人の愛の巣として錦糸町の隣の亀戸にマンションを購入、これもアリサが友人たちにいつでも会えるようにとの後藤の気遣いだ、そしてアリサが店を辞める最後の日がやって来た。


サヨナラパーティーの日、後藤さんに「お金いいですから」と言われイソイソと店に行ったワタクシは一応アリサのサヨナラなので安~い花束を買いプレゼントした、ワタクシの隣にはもちろんマリアが座った、
ワタクシ「マリア、アリサが明日から来なくなると寂しくなるだろう?」

マリア「ウン、アリサガ イナイト ホントウニ サミシイネエ」
マリアはいつもよりも元気がなかった、輝くような微笑みも心無しか陰りが見えていたがワタクシはそれはアリサがいなくなる為に寂しいからだと単純に思っていた。


マリアが他の席に付いている時だった、
アリサ「レイスリーサン、アテ(お姉さん)マリアヲ ヨロシクネ」


ワタクシ「宜しくって、マリアは友達だからなあ」


アリサ「ウン、ワカッテル、デモ アテマリア ワ レイスリーサン ノコト スキダト オモウヨ」


ワタクシ「アリサ、今フィリピンに恋人がいるんだよ、マリアにアプローチすればフィリピンの彼女は悲しいと思わないか?」


アリサ「ウン、ソウダネ、ゴメンナサイ、ジャア トモダチトシテ アテマリア ヨロシクネ」
ワタクシは判っていた、マリアがわワタクシに気持ちがあった事を、だがマリアは自分を選ぶ事で他の女性のが傷つくのをヨシとしないであろう、マリアはそういう女性だった、そんなマリアだからこそワタクシは好きだった。


これはワタクシが真面目だったからではない、騙して悲しませてはいけない女性が二人いるならば手を出さない事だ、それはワタクシの恋愛の経験則で得た信条のようなものだが、もしそういった二人に手を出せば自分も心が痛い目にいつかあってしまう、遊びと恋愛は違う、情が入ってしまうと苦しみながらどちらかを切らなければならない場合が出てくる、遊びならアッサリさよなら出来る、過去に心の痛い目にあったワタクシはマリアに手を出す事は出来なかった。


最後という事でアリサがカラオケでO-ZONEというグループの「恋のマイヤヒ」を歌った、このO-ZONEはアリサの故郷モルドバ出身でヨーロッパを中心に世界でもこの曲が大ヒットしモルドバの名を広めたのだった、そしてアリサの店での仕事は終わった、マリアとはハグして別れた、随分アッサリした別れだと思ったが明日もどこかで会うらしい、それではしょうがないと思ったがワタクシは何故か嫌な予感がしてならなかった。



次回に続きます、いつもご訪問いただき心より感謝致します。