419.大地に咲く花.2部.3 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
アリサが日本に来て1年が経った、彼女は仕事にも慣れリカコママの店ではNo.1となっていた、400万円の借金も5ヵ月で返し終わり彼女は今や自由の身だった。



リカコママに頼んでママ名義だが銀行に口座も作り、貯金も始めていた、勿論、母親への送金は毎月欠かさない、リカコママの店で働いて何人かの男がアリサの面倒をみたいと申し込まれたが、それを全て断っていた、アリサの頭には後藤への思いがまだ合ったのかもしれない、そんなある日、リカコママから店に皆に話があるから早め来てほしい呼び出しがありミユキと店に向かった。


リカコママの話は今の店を閉めるという事、今後は売春の仕事は辞めて普通の飲み屋にするという話だった、「売春(彼女たちはデートと言っていました)をする娘は他の店を紹介する、直ぐでなくてもアパートを出てほしい」というものだった、リカコママには日本人の旦那との間に二人の子供がいるが子供の為にいつまでも売春に関わっていてはいけないと方向転換したのかもしれない。


さて、折角店に慣れてきたアリサだが「どうしたものか」と考えた、リカコママの店に残ればミユキやナオコと同じアルバイトになるが、売春していた時の3分の1のお金にしかならない、売春をしていた女の娘は収入がなまじいい為になかなかこの仕事が辞められないらしい、この時のアリサも同じように感じたのだろう、結局、他のタイ人がやっている店に移る事になった。


しかし、アルバイトのドブスのミユキはタイに帰る事にした、そこでリカコママはワタクシに一緒に入国管理局にミユキを連れて行く事を依頼した、一度行き、二度目の時はチケットを持って入国管理局に収監される、アリサはミユキと仲がよく姉妹のような間柄になっていた、アリサが見送りたいというのでワタクシとミユキとアリサで行く事になった。


入国管理局に向かう電車の中で流石にガラッパチのミユキも元気がまるでなかった、そこで
ワタクシ「なんだミユキ、今日はおとなしいな、元気出せよ、日本のことわざに‘天はブスの上にブスは作らず、ブスの下にブスは作らず,というのが有るんだ」


ミユキ「ドウイウ イミ?」


ワタクシ「要は、お前以上のブスはいないという事だよ~」


ミユキ「ナニ~、サイゴマデ ミユキ イジメルナー!」


ワタクシ「そんな事はないよ、ミユキは顔はブスたけど心は真っ直ぐで優しい女だって事はよく判ってるよ、だから、最後までミユキらしく元気だせよ、そうだよなっ、アリサ」
アリサも仕切りに頷いた、

ミユキ「ウ、ウン、ソウダネ、ヤット タイニ カエレルンダモノネ、ゲンキジャ ナイトネ」
入国管理局で担当官に房に連れられて行き数日後ミユキはタイに帰った、彼女は10年間日本にいた、10年間タイの家族に会っていない、その間に毎月仕送りをして小さいながら家を建てた、日本にいる間に少しは蓄えも出来た、オーバーステイながら彼女は精一杯頑張って日本を去っていったのだった、アリサは姉ともいえるミユキが去り、悲しい顔はしたが泣かなかった、いや、故郷に待っている家族がいるミユキが羨ましかったのかもしれない、出会いや別れを経験して人は強くなる、アリサはまた一つ強くなったのかもしれない。


アリサを連れて電車に乗って錦糸町に帰る時、水道橋駅に差し掛かった時だった、
アリサ「ゴトウ...、ゴトウサン!」


ワタクシ「えっ、後藤って、タイでアリサが好きだった奴か?」
電車を飛び出て追い掛けようとするアリサをワタクシも追い掛けた、しかし見失ったのかアリサの勘違いだったのか電車に乗っていたのが後藤さんだったかどうかは分からなかった、アリサは後藤さんの事が未だに忘れられない心の中にある唯一の存在のようだ、ワタクシはアリサは400万円の借金を背負う事になるのに日本に来た、それは後藤という人に会いたい為に来たのではないかと感じた。


結局アリサの勘違いだろうと再び電車に乗り、冗談を言って和ませようとするがアリサの笑顔を見る事は出来なかった、たまに笑っているように見えるのは仕事で必要に駈られ笑った振りをしているだけだった、彼女の心はまだ闇の中にあった、後藤さんなら彼女を救えたかもしれないが、このままアリサは歳を重ねて行くのではないかとワタクシは懸念した、同じ年頃の女の娘たちはオジサンが転んだだけでもケラケラと笑うものだがアリサにはそんな事はなかった、ワタクシはもし神がいるなら彼女の心を救ってほしいと願わずにはいられなかった。


いや、実は神はいた、嫌、女神がいたのだ、アリサはある女神のような女性の登場によって救われる事になる、その女神はフィリピーナのマリアという名だった。



次回に続きます、いつもご訪問いただきまして心より感謝いたします。