411.大地に咲く花.10 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
いよいよアリサの出番となった、ピー.ユッに連れられ大部屋に入っていく、二人連れの客の前に止まりピー.ユッが指を指さして「此処に座れ」と言われるままに座るアリサ、ここは屋敷の中にパブ形式の店を作っていた、飲むだけでもオーケーだがほとんどの客は少女たちとの営みが目的だった。



二人の男は40代と30代で暑いのにシャキと背広を着たアジア系の男たちだった、40代は山崎と言い30代は後藤と名乗った、山崎はタイ語で何やらアリサに話しかけていたが日本語も英語もタイ語も解らないので会話にならないので両手を挙げて「お手上げだ」のゼスチャーをして見せ英語が少し話せるウクライナの娘と話始めた、そこで後藤が身振り手振りでアリサにタイ語を教え始めた、「ポム チュー ゴトウ クラップ(私の名前は後藤です)」と言って自分を指差した、アリサも真似て「ポム チュー ゴトウ クラップ」と繰り返す、後藤は「ノーノー」と指を振り「ゴトウ」と言って自分を指し今度はアリサを指差した、それを見てアリサは初めて理解して「アリサ」と答えた、後藤は「オーッ、名前はアリサか!じゃあ、言ってごらん、ポム チュー アリサ カー(私の名前はアリサです)」アリサも「ポム チュー アリサ カー」とリピートした、これがアリサが覚えた初めてのタイ語でこの言葉をこの先に何十回、いや何百回と使う事となった。


山崎「後藤、俺この娘と行くからな、お前どうする?」


後藤「判りました、もう少しここで飲んでますよ」


山崎「おっ、そうか、じゃあな」
後藤とアリサを席に残し先輩らしい山崎はウクライナの娘を連れて大部屋を出ていった、後藤は残ってアリサにタイ語を教えていたが10分ほどしてピー.ユッがやって来て後藤に聞いた
ピー.ユッ「他のお客様がアリサを連れて部屋に行きたいって言ってるんですよ、どうしますか後藤さん?」
後藤は少し考えて
「いや、俺はいいや」と答えた。


ピー.ユッはアリサに立つように言い、アリサは少し後藤の方に目をやったが後藤は水割りを飲んでいてアリサと目を合わす事はなかった、アリサはピー.ユッに連れられ他の客の席に付く、客は40代の優しい感じのタイ人だった、そしてこの客がアリサの初めての客となったのだった、席に着き20分ほどして客と一緒に大部屋に向かう、その時に後藤の方に自然と目がいったが後藤は全く知らん顔だ、何故かアリサは軽く腹が立っていた。


個室に入りアリサは後ろからタイ人にいきなり抱き締められた、「チンチン、ナーラック ナー(本当に可愛いね)」何を言っているか解らないし、どうしていいか解らないままタイ人の男にそのまま身を任せた、男がどんな事をしても何も感じないし何のサービスをする事もないままに事は終わった、アリサの心は叔父にレイプされた時に死んでいた、モルドバのアリサはもう死んだのだ、死んだと思えばどんな嫌な事でも出来る、不思議だがこの時にアリサは心が少しだけだが強くなった気がした。


人は経験を積めばそれを生かそうとする生き物だ、優秀な人はその経験を元に人格を高め人生において何でも成功に向かって生かそうとする、しかしワタクシのような愚か者は何度失敗しても同じ失敗を繰り返す、ギャンブルや女遊びの誘惑に負けて長い間愚かな事を繰り返した、「失敗は成功の元」と言うがこれは改善という努力が必要だろう、努力するという事が大嫌いで怠ったワタクシが愚かな事を繰り返してしまうのは当たり前という事だろう、この話を読んでらっしゃる読者の方も身に覚えがタップリの方も多いのではないだろうか、そう、あなたですよ、ア.ナ.タ、少し横道に逸れてしまったがアリサは全く違っていた。


彼女は少女に取っては地獄のような経験をしてきた、そしてその経験則を生かす努力をしなければ生きていけない環境にあったという事だろう、そしてアリサは元々が聡明な女性であったのだろう、彼女は過去の経験則を元に生きて行くが時には冷たく思われ誤解を生んでしまう事にもなってしまうのだった。


こうしてアリサの売春婦としての仕事は始まり、毎日毎日、餓えた男たちの相手を続けて自由という名の切符を手に入れる為に彼女は歯をくいしばって生きていった、何十人、何百人相手にしていた、そして気がつけばここに来て3年の月日が流れてアリサは15歳になっていた、そんなある日にアリサを更に落ち込ませる一つの事件が起きたのだった。



次回に続きます、いつものご来訪を心より感謝致します。