409.大地に咲く花.8 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
残された女ボスが何か男に言うと男は部屋から出ていき直ぐに1人の女の娘を連れて戻って来た、アリサにはその女性がモルドバ人だという事が一目で判った。



その娘はアリサを見て少し微笑んで女ボスに何か話していた、そしてアリサに話し掛けてきた、
女の娘「私は名前はイリーナ、あなたの名前は?」


アリサ「わ、私の名前はアリサ」


イリーナ「そう、アリサね、幾つなの?」


アリサ「12歳だけど」


イリーナ「12歳か、私は13歳よ、一つお姉さんね、宜しくね」
一通りの話しをしてイリーナは女ボスと再び話しをした、
イリーナ「アリサ、始めに言っとくけどここからは絶対に逃げれないからね、ここは組織の人間がいつも見張ってるし屋敷から出て警察に行っても無駄だから」
タイの場合犯罪組織と繋がっているケースはよくある事だ、組織と一部の警察や政治家は癒着が激しい、もちろん金で結ばれている、ワタクシが始めてタイに行った時タイ人に「殺人以外は警察とは金で決着がつく」と言われた事がある、裏を返せば金で犯罪を揉み消すも事も出来るという事だ、イリーナが言っている事は本当だろう。


しかし、アリサはタイと組織がどうなっていようとも逃げる気がなかった、逃げて一体どこに行くというのか、故郷のモルドバには母親と弟がいるが戻ったところで貧しい国で苦労するだけだ、何もなくお金を稼ぐ機会の少ないモルドバにいるより大都会のタイなら生きていける気がした、この時「もうモルドバには戻らない」と覚悟を決めた、運び屋のルーマニア人の女が言った「強くなって生き抜くのよ」という言葉でアリサは180度前向きに変わった。


女ボスは冷静にアリサの事を見つめていた、女ボスの名前はユッと言った、正確にはタイ特有のやたら長ったらしい名前が有るのだろうが、タイ人は簡単に呼ぶためにニックネームが有りユッというのはタイ語で沢山という意味で皆はピー(姉貴、お姉さん)ユッと呼んでいた、ピー.ユッの過去は解らないが過去に相当苦労したのか人を見る目を持っていた、彼女はアリサの覚悟を見切ったかのようにフッと短く笑い部屋から出て行く。


女ボスが出ていったのを見届け、やっと笑顔に戻った男はイリーナと一緒にアリサを連れて応接室を出た、どうやら案内してくれる場所がアリサの新しい寝所らしい、屋敷の裏を出て30メートルほど歩いたところに一軒の家が建っていた、入り口には見張りらしい二人の男が椅子に座っている、その間を入って行くと一階にはリビングがあり、そこに10人のアリサと大して変わらない歳の女の娘たちがテレビを見ていた。


その娘たちの国は様々だったタイ、ロシア、ウクライナ、ラオス、モルドバ、もちろんタイ人もいる、そして彼女たちは10歳前後から15歳て皆が買われてきて売春をさせられている少女たちだ、タイには幾つかの顔がある、一つは観光大国としての顔、一つは海外の企業を優遇し国内に呼び込み経済発展を続ける顔、そしてもう一つは売春天国という顔だ、タイでは富める地域とそうでない地域の格差のギップが激しい、富める者がいる反面貧しい者がいる、金を持つ者が強者で偉く金がない者が弱者で愚かなのか、そうであってはならないはずだが金持ちや地位の高い人間は少なからずそう思ってしまう事が多いのではないだろうか、アリサや他の少女たちは金持ちの欲望の需要に基づいてここに連れて来られたのに他ならないのだから。


二階に上がると3つの部屋があり二段ベッドがズラリと並んでいる、ここで女の娘が寝る場所らしい、イリーナにこのベッドを使えと言われ横に荷物を置くアリサ、部屋には一階にいた女の娘たちとは別に10人ほどが思い思いの格好でベッドにリラックスしたように寝そべっている、その光景はアリサはもっと汚いところに入れられると思っていただけに意外だった、組織は心得ている、彼女たちには高い金を払っているから回収するには長い間働いてもらわなければならない、その為には多少は居心地を良くしなければいけないという事だ、罵声のタイ人だけの幼児売春では粗末なところに閉じ込められ酷い扱いを受けるところがあるのだから。


イリーナによるとシャワーも自由に入っていいし3食がちゃんと出るらしい、しかしアリサは自分が一体いつまでここにいるのか、そして自分の借金はいくらなのかというは単純な疑問があった、しかしそれをイリーナに聞くのには怖く勇気のいる質問だった。



次回に続きます、いつもご訪問いただきまして心より感謝致します。