内装業の桐田のオヤジ、年がら年中「金、金、金」と騒いでいるのです、マトモに付き合っていたらとんでもない事になるのですが、妙に憎めないところもある人間なのです。
前の会社をワタクシと同じように2000万円の不渡り手形を掴まされて潰してしまっており、その時に保証協会付けのお金を踏み倒している桐田のオヤジ、例え10数年たっていようと保証協会を踏み倒した爪後は消えないのです、従って会社で借り入れするには方法は一つ、社長の首のすげ替えする事なのですが、訳のわからない会社の社長には誰だってなりたくないはず、そこで桐田のオヤジはワタクシも知っている会社の職人の伸一と言う子に目を付けたのです。
ワタクシ「オイオイ、伸一君は全部了承してるんだろうな、会社が潰れれば負債は全部伸一君のところに行くんだよ」
桐田のオヤジ「いや、大丈夫だ、心配ねえー」
このオヤジの言う事は100%信用出来ませんが、伸一君が了承している事だけは間違いなさそうなのでワタクシは必要書類と、そして銀行に聞かれるであろう問答集を作り桐田のオヤジに渡しました、金額は500万円でしたが借り入れ出来たのは200万円です。
世の中の状況は目まぐるしく変わっていました、ワタクシが会社を閉鎖した時は銀行が貸し渋りを行い多くの中小企業が倒産し自殺者が多数でて社会問題になった為に政府の政策で一転、保証協会が保証する事で貸し出しが一気に緩まったのですが、それから一年以上たって来ると新たな問題が浮上してきたのです、一つは銀行が中小企業に貸し付けていた分を保証協会付けに切り替えてしまうという事です、具体的には初めから銀行のリスクで1000万円を貸し付けたが潰れる可能性が高いと判断すると保証協会付けに切り替える、すると銀行はノーリスクで利益を取る事が出来るのです、中小企業からすると切り替わっただけで実際にはお金が手元に入る事がないのです。
そして、もう一つは悪どい経営者が先行きに不安がある為に会社を整理すると同時に借りれるだけ借りてトンヅラしてしまう件数が急増したのです、その為保証協会付けの融資はその後、再び必要以上に厳しくなったのです、一般的にこの事は知られていませんが当時は数兆円が焦げ付いてしまったと言われています、勿論、全て国民の税金で賄われたのですが、1人として責任を取った政治家、役人、銀行マンはいないのです、マスコミも少し報道しただけで誰かの責任を追及する事はありませんでした。
ワタクシも当時のこの制度を利用してオコボレ頂戴をしたのでデカイ面は出来ませんが、政府の間違った政策の一つであった事は間違いないでしょうし実際は知られていない事はたくさんあり、それに対して常に責任の所在はハッキリせずにバカを見るのは国民だという事を頭に入れて置かなければならないのです。
200万円手に入れた桐田のオヤジ、ワタクシに10万円渡して浅草に戻っていきました、そしてこの融資以降、融資状況は厳しくなりワタクシの出番は無くなりました、バングラデシュから帰って来たアリからの依頼で外国人たちの引越しの手伝いや相変わらず入官に面会に連れて行ったりと僅かながらお金は入ってくるものの生活は徐々に苦しくなっていきました。
空いている日はパチンコをやり食いつなぐ日々が続き、ある日パチンコ屋を出たところで1人の女性と出くわしました、その女性は以前に行っていたパチンコ屋で働いていた女の娘です、念のため申しておきますが日本の女性です、彼女は自転車で前に女の子を乗せていました、パチンコ屋で働いている時は高校生のアルバイトかと思っていた娘でコギャル風な感じで店の中で何度か話はしたことがあったのですが、私服を着ていた彼女はまた感じが違っていたのでした。
次回に続きます、いつもご訪問いただきまして誠にありがとうございます。