121.ハルの微笑み.65 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
現在のワタクシが当時のワタクシに「雪子の事は諦めろ」とアドバイスしたとして果たして当時のワタクシは聞き入れたでしょうか、4.5年前までのワタクシは過去の事をよく後悔しました、あの時ああしとけば良かった、こうしとけば良かったと、しかしいくら後悔しても過去は勿論変える事は出来ません、たとえ現在のワタクシのアドバイスも当時のワタクシは耳を貸さなかったかもしれません、未来はどうあれ雪子の事を愛していてその愛を捨て去る事など許されるはずないと思い込んでしまっていたのです、愛とは深ければ深いほど簡単には捨てれないのです。



ワタクシと雪子は事務所に帰りました
ワタクシ「お腹減ってないか、何か食べるか?」

雪子「ダイジョブ」


ワタクシ「どうやって来たんだ、日本に」


雪子「タイカラ シンガポール ソレカラ イープン(日本)」
雪子が頼んだ組織はかなりの腕利きだったと思います、日本にくるには幾つかの手口があります、パスポートとビィザは本物で、シンガポールと日本を経由してアメリカかカナダへの観光ビィザで入って来る、但し写真は本人ではないのですが色が黒かったり化粧の加減で見分けがつきづらくそのまま通過出来てしまうケースは意外に多いのです、雪子が連絡が取れなくなって5日ほどで準備出来てしまうタイの闇ルートの組織はこの方法を取ったのだろうとワタクシは思います。


ワタクシ「何か買いにいくか?」


雪子「...............」

ワタクシ「行くぞコンビニ」
何も言わないがワタクシについてくる雪子、コンビニで歯ブラシやタオル、弁当や飲み物を買い再び事務所に戻り無言で食事する二人、そしてシャワーを浴びテレビを見ながら一組しかない布団に入るワタクシ達、暫くして再会してからずっと恐い顔をしていた雪子の顔が緩み自ら話しかけてきました、
雪子「オニイチャン、ゴメンナサイネ」


ワタクシ「もういいよ、終わった事だから」


雪子「オニイチャン オコッテルデスカ」


ワタクシ「怒ってないと言えば嘘になるけど、来ちゃったんだからしょうがないだろう」
そして雪子は
「オニイチャン ゴメンナサイ ホント ゴメンナサイ」と大きな目に涙を浮かべワタクシに抱きついて来るのでした、心の中にわだかまりを抱えながらワタクシは雪子を抱きしめるしかありませんでした。


次の日の朝、雪子はいつもの雪子に戻っていました、「オニイチャン、オニイチャン」と甲斐甲斐しく振る舞いワタクシの前日の怒りを少しでも和らげようとしているかのようでした、夕方になり錦糸町のアパートに送り近くの喫茶店で待ちます、そこに梅津君がやってまいりました、男1人で店に行くのが嫌でワタクシが呼び出していたのでした。


梅津君「レイスリーさん大変でしたねー、それで雪子ちゃんは?」


ワタクシ「化粧してるんじゃない」


梅津君「元気ナイデスネー、せっかくタイから来たのに」


ワタクシ「冗談じゃないよ~、本当に泣きたいよ、涙チョチョリーナだよ(解る人には解ると思いますが、チョチョリーナとは当時有名なポルノ女優からイタリアの議員になった人なのです)」


梅津君「気持ち解りますよ、まあとにかく今日は忘れてパーッといきましょう、パーッと!」
そこに雪子がミユキと化粧と着替えてやってきました。


雪子「マノ~イ、オヒサシブリ~、ゲンキ?」


梅津君「おっ、久し振りだねー、雪子ちゃんも元気そうだねー」


ミユキ「ウ~ン、ユキコ ワ マノイト ハナサナクテモ イイノ ミユキガ イルンダカラ」


ワタクシ「いいねー、梅津君はブスに好かれて」

ミユキ「レイスリーサン ワ イイノー、ユキコ ガ イルンダカラ ネッ マノ~イ」


梅津君「そうだねー、僕は幸せダヨー、ミユキちゃんがいるだけでー」


ミユキ「ホントー ウレピイー!」


ワタクシ「さすがだねー、口だけ男わ」


梅津君「わかります、ヤッパリ」
能天気な会話ん交わして少し心が和らいだワタクシと能天気な3人は店に向かうのでした。



次回に続きます、いつもご訪問いただきまして心より感謝致しております。m(_ _)m