6月のニュースですが、タブレット端末活用に関するニュースです。ボクはいずれ学校教育の現場ではいやでもタブレットが欠かせなくなってくると考えています。練馬区でも試験的にやってみるべきだと思います(まずは区議会で!)。


【大阪から世界を読む】

広がる韓国との“IT格差” 切り札・デジタル教育を日本は仕分けていいのか
2012.6.24 12:00

 総務省が今月13日、事業の無駄を見直す府省庁版事業仕分けで、「未来の教育」が廃止判定を受けた。小中学校でタブレット端末を授業に活用した「フューチャースクール事業」(実証実験)のことだ。2年前の政府による事業仕分けでも廃止勧告を受けている。文部科学省との二重行政の解消や厳しい財政の影響のようだが、同様の事業については、お隣の韓国が“国をあげて”推進している。また地方自治体レベルで、大阪市が来年度から本格的な実証実験が始める。廃止は時代の流れに逆行しているような…。(大谷卓)

 人材こそ最大の「資源」

 学校の門をくぐると電子学生証が反応し、親の携帯電話に登校を知らせる。教室にはデジタル黒板。生徒の机のパソコンとLANでつながれ、出題や回答が一目で分かる。電子黒板に、生徒のパソコン画面を映し出すこともでき、学習への集中力を養える-。

 韓国・世宗で4月に開校したスマートスクールと呼ばれる学校の様子だ。韓国市場のマーケティングリサーチなどを行う調査会社「エイチ・アイ・ビジネス・パートナーズ」(東京)の報告書によると、世宗の約150校で導入される。

 韓国のIT(情報通信)教育に詳しい新潟大学非常勤講師の上松恵理子さんによると、韓国で、IT機器を使った家庭学習の利用者は一昨年、300万人を超えた。2000年に認可され、最大規模のサイバー大学「ソウルデジタル大学」は16学部あり、学ぶ人は増えているという。

 ほぼ100%の小学生が携帯電話を持つとされる韓国では老若男女を問わずITへの関心が高く、教育環境のIT化も広がりやすい。国を挙げて進める必要もある。上松さんは言う。

 「韓国は人材を国の発展のための資源ととらえている。時間、場所に制約がない教育のIT化を人材育成につなげようと考えているんです」

 「教育格差」解消の秘策

 しかし社会問題化するほど、韓国の教育熱は過剰だ。生活費に占める、塾などの「私教育」も高い。1人で塾を複数掛け持つ子供はザラ。極端な受験戦争の末、生徒・学生が自殺に至るケースもある。

 韓国統計庁の調査結果によると、私教育の利用率(2010年)は約76%。1カ月の平均所得をみると、700万ウォン以上の家庭では約48万ウォンあるのに対し、100万ウォン未満では6万3千ウォンしかない。私教育は教育格差の「元凶」とみられている。

 公教育の中でIT機器の活用に取り組むのは、私教育を減らすためだ。インターネット接続ができる環境さえあれば、学ぶ時間や場所に制約はないし、親が経済的弱者でも、子供に学習意欲さえあれば高い教育を受けられる。学習時間の管理もできるため、得意・苦手分野の克服も可能だ。

 IT化を進め、教育格差を解消することで「ゆがみ」がなくなれば、人材も幅広く発掘できる。

 児童・生徒1人ずつにタブレット端末を配布するという計画が進められ、私教育の利用率は10年に初めて減少。実証実験ながら廃止を判定する日本と、国をあげて取り組む韓国…。両国の間には“IT格差”がある。

 残された成長分野

 日本でもIT機器を利用した教育は「残された成長分野のひとつ」とされ、とくにデジタル教科書の活用は注目されている。平成22(2010)年に内閣IT戦略本部が決定した「新たな情報通信技術戦略」で「デジタル教科書・教材などの教育コンテンツの充実」が掲げられ、32年度までに児童・生徒1人にIT端末1台の普及することが目標とされている。

 その未来の教育が仕分けられたのはなぜか。

 今回の総務省の仕分けは、厳しい財政事情を考慮し、無駄を省こうという取り組みだ。所管の文科省との「棲み分け」が不十分であることなどが指摘されたが、教育の電子化に対する必要性がまったく無視されたわけではない。その一方で「地方自治体の導入意欲に任せるべき」という意見もあったという。

 上松さんによると、実は先行する韓国でも、デジタル教科書の実証実験は132校だったのが、今年度が32校、来年度はゼロになる。タブレット端末を1人1台という計画も、地方自治体ごとの導入でも可能な方向へ方針転換した。

 いずれも世界覆う厳しい財政事情が背景にあるとみられている。

 そんな中、大阪市教委が25、26両年度、市立小中学校の中からモデル校を指定し、小学3年生以上を対象に授業用のタブレット端末を配布する計画だという。25年度は約2億4千万円をかけ、小中計7校に1学年1学級分(約40台)を配備。実際の授業での効果を検証し、27年度以降の全校導入につなげる。

 地方自治体としては珍しい取り組みだ。国レベルのトーンダウンが見える中、その試みの結果が注目される。大阪市教委の担当者は「デジタル教科書も含め、どういう効果があるのか、あらゆる検証を行いたい」と話している。

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