今朝の「産経抄」(産経新聞3月4日)に故・池田勇人氏の「放言」についての記事がありました。池田勇人といえば「所得倍増計画」で有名ですが、この記事の筆者の理解の仕方がなかなか産経新聞らしいと思いました。

いまなら、マスコミでぼろぼろにたたかれそうな一言ですが…


2012.3.4 03:03 [産経抄]

「貧乏人は麦を食え」というのは、戦後の政治史上に残る「放言」のひとつとなっている。昭和25年12月、当時の池田勇人蔵相が参院法務委員会で米価値上げを追及されたときの答弁である。実際は、それほど乱暴な物言いではなかった。

▼「日本人は皆同じものを食べているが、古来の習慣に戻り、所得の多い者は米本位、少ない者は麦本位としたい」。これがマスコミや野党によって「翻訳」されたのだった。とはいえ、当時まだまだ深刻だった食糧問題をすりかえたと批判されても、仕方なかった。

▼この例を持ち出すまでもなく、国民に食糧を安定的に供給することは政治の最大の仕事だ。できないと政権の命取りにもなる。独裁国の北朝鮮でも同じである。いや経済発展で大きく後れをとっている独裁国だからこそ「食糧」は常に首脳たちの頭を離れないはずだ。

▼その北朝鮮が食糧支援を受ける代わりに、ウラン濃縮活動を一時停止することで米国と合意した。慢性的食糧不足が伝えられる国である。しかも4月の金日成主席生誕100周年などの記念日には、国民に特別配給する計画だといわれる。

▼だから新しい金正恩体制としては国民を食べさせるため、膝を屈し「火遊び」をやめたという美談めいた見方もある。だが一方で、食糧はすでに中国から大量の支援を得ており、今はさほど深刻ではないとの指摘もある。米国から譲歩を引き出す狙いは別にあるというのだ。

▼それにウラン濃縮停止といっても、寧辺の施設に限られている。ここは核開発の「ショーウインドー」にすぎず、他の場所で秘密裏に続けられる恐れは残っているとされる。「見せかけ」に惑わされず気を引き締めていくしかない。