朝、駅で階段を上がっていたら、前のおじさんがいきなり歌を
歌い出しました。
思わず口ずさんでしまったようでしたが、なかなかの美声でした。
もしかしたら、音楽をたしなむ人だったのかも。
この朝の出来事がきっかけでずいぶん前の事が思い出されました。
まだ私が学生で、親元に住んでいた時。
決まって夜の八時頃、大きな声で歌を歌いながら私の家の前を
歩いてゆくおじさんがいました。
綺麗な声をされていて、ゆったりと楽しそうに歌うのです。
選曲は結構ヤングで、浜崎あゆみとか、そこら辺でした。
そのうちに、毎日八時ごろに行われるおじさんの歌声ショーが
ひそかに楽しみになっていました。
声しか聴いていないので、どんな人かはまったく知りません。
彼としては、自分のファンがよもやこんなところにいるなんて
思いもよらなかったでしょうね。
いつもの時間になっても登場しないときもあって、時には夜11時
くらいになることや、2、3日、歌声が途絶えることもありました。
それでも、しばらくすると通りの向こうから綺麗な歌声が
聞こえてきて、私はそれを聴く度に、よし!という気分に
なれたのでした。
それから私は進学や就職のために街を離れたりしたわけですが
あのおじさんは今でも元気にやっておられるでしょうか。
