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9 Doctors

Snow Manをイメージした医療物語を綴っています。ファンによる非公式・非営利の創作で、実在の人物・団体とは関係のないフィクションです。

 

 

 

小さな変化に気づく人がいる。

それを見逃さない人がいる。

そして、
その声を信じる人がいる。

医療は、
一人ではできない。

だから今日も、
チームで一人の人生を支えている。

 

  

 

 

 

 

その手に、ぬくもりを  

昼下がりのSnow Man総合病院、リハビリテーション室。 

 

窓からは柔らかな陽光が差し込み、平行棒で歩行訓練をする音や、理学療法士たちの快活な声が響いている。

 

その一角で、リハビリ病棟のベテラン看護師と向井康二(こーじ)が、タブレットを囲んで頭を突き合わせていた。

 

看護師:

「向井先生、Aさんの歩行訓練なんですけど、なかなか進まなくて……。ご本人も意欲が落ちているみたいですし、なんだか最近、左側の空間無視が強くなっているような『気がする』んです。」

 

 

看護師の言葉に、こーじは「……んー、なるほどな」と小さく頷き、タブレットの画面をスッとスワイプした。そこに映し出されたのは、Aさんの術後のMRI画像。

 

こーじの瞳が、一瞬で鋭くなる。

 

それは、かつて数ミリの血管を繋いでいた「脳外科医」の目だ。

 

こーじ:

「……あー、やっぱりな。ここ見て。右の頭頂葉、ここの浮腫(むくみ)がまだ完全には引いてへんねん。だからどうしても、左側の注意障害が出やすい時期なんよ。」

 

こーじは画像を拡大し、神経の通り道をなぞるように指で示した。 

 

こーじ:

「でも安心して。ここの神経のメインストリートは生きてる。画像を見る限り、リハビリで回復する余地は十分にあるから。……今は無理に歩かせようとして、できない自分に絶望させる時期やない。焦らんでええよ。歩行訓練は一旦お休み。
無理にやらせて失敗体験を増やすより、今は成功体験を積ませる時期や。まずは車椅子に座って、患者さんの好きな話でもして、脳の活性化を優先しよか。」

 

さらさらと専門的な根拠を提示し、具体的な方針を打ち出すこーじ。

 

 

その迷いのない診断に、看護師は思わず感嘆の声を漏らした。

 「……すご。さらっと画像から根拠出してきた。……さすが、元脳外科のエース……!」

 

こーじはタブレットを置くと、いつもの柔らかな表情に戻って看護師を見つめた。

 

こーじ:

「でもな、俺が言うた画像の話より、何倍も大事なんは、ナースさんがさっき言うてくれた『気がする』っていう感覚やねん。」

 

 

彼女が不思議そうに首を傾げると、こーじは言葉を継いだ。 

 

こーじ:

「俺ら医者は、一日のうちのほんの数分しか患者さんを診られへん。でも、24時間、一番近くで変化を見てるのはナースさんや。現場でずっと寄り添ってる人の『なんか変やな』『いつもと違うな』っていう直感は、時に最新のMRIより正確な診断書になるんよ。……いつも、そんな細かい変化に気づいてくれて、ほんまにおおきにな。」

 

 

思いがけない感謝の言葉に、彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。

 

看護師:

 「……いえ。先生がそう言って、私たちの言葉を信じてくれるから、私たちも自信を持ってケアに当たれるんです。」

 

 

こーじ:

「よし! 真面目な話は終わり! ……あ、そうや。これ食べる?」 

 

 

こーじは白衣のポケットから、カラフルな包み紙の飴ちゃんを取り出した。

 

こーじ:

「売店のおばちゃんから『こーじくん、頑張りや!』って貰った特製飴ちゃん。連勤で疲れとるやろ? 糖分補給しとき。」

 

看護師:

「あはは、いただきます。……先生、脳外科の頃より、今の方がなんだか楽しそうですね。」

 

 

 飴を頬張ったナースが、ふと尋ねた。

 

こーじはリハビリに励む患者さんたちの背中を眺めながら、静かに答えた。

 

こーじ:

「……そやな。メス持ってた時より、今の方が自分の『手』が温かい気がするんよ。……脳を治すのも大事やけど、その人の『日常』を一緒に作っていく今の仕事、俺は誇りに思ってる。」

 

 

こーじはそう言うと、「ほな、リハビリ、一発笑わせてくるわ!」と、カメラを提げて足取り軽くリハビリ室の奥へと向かっていった。

 

 

Snow Man総合病院のリハビリ室には、最強のタッグがいる。 

 

元・脳外科医の向井先生が持つ「鋭い知性」と、看護師たちが持つ「現場の直感」。

 

 

「画像が全てやない。毎日見ているあなたの目が、一番の診断書や」

 

論理的な根拠を大切にしながら、それ以上に「人の心」を尊重する。

 

 その両方があるからこそ、この場所では今日も、昨日まで立てなかった人が一歩を踏み出し、名前を呼べなかった人が家族の名を呼ぶ。

 

「先生、飴ちゃんより、次は美味しいケーキが食べたいなー!」 遠くから飛んできた看護師の冗談に、こーじの声が響き渡る。

 

 

「……贅沢言うなー! それは照兄に奢ってもらってや!(笑)」

 

 

賑やかなリハビリ室に、今日も希望の光が満ち溢れている。

 

塚地ナースの「極秘メモ」

「(……ちょっと見て。向井先生、ナースステーションに来るたびに『お疲れ様!』って飴ちゃん配ってるわよ……!! ……。…でも、ただ飴配ってるだけじゃないの。ナースたちの疲れ具合を見て、適切なタイミングでフォローに入ってるの、私見逃さなかったわよ……。……あぁ、こーじ先生。……。……その気遣いの天才っぷりが、この病院のチームワークを支えてるのね……!! 私の心の栄養失調も、その飴ちゃんと優しさでフルチャージして……(昇天))」

 
 

 

ーー次回予告ーー

「もう一度、投げたい。」

その願いを胸に、
リハビリ室の扉を叩いた一人の少年。

けれど、
彼の足を止めているのは
傷ではなく――

恐怖と、痛み。

次回
「一歩の
勇気 」