[ サーチュイン遺伝子 ] | ラウルイクセンバーグ 『人間とは何だろう?』

ラウルイクセンバーグ 『人間とは何だろう?』

『人間とは、究極は何だろう?』
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[ サーチュイン遺伝子 ]
 
 1999年、アメリカのMITのレオナルド・ガランテ博士が、酵母においてサーチュイン遺伝子から合成される酵素が代謝や加齢に関連していることを発見しました。昆虫からヒトまで地球上ほとんどの核を持っている生物がそのタンパク質で遺伝することがわかりました。この遺伝子は人間では飢餓状態になった時に、生き延びるために獲得した遺伝子と考えられており、「長寿遺伝子」と呼ばれることもある後天的にできた遺伝子なのです。

 これまでの研究でサーチュイン遺伝子は、記憶を良くし、アルツハイマーの改善と関係しており、さらには心血管系や糖尿病とも関連していることが徐々にわかってきました。
 しかし、その作用メカニズムを解き明かそうと世界中の研究者が挑戦し、また仮説を立ててきましたが、なかなか解明できなかったのです。
 
 2013年、8月30日、国立遺伝学研究所の小林武彦教授らは、サーチュイン遺伝子にはある遺伝子の数を一定に保つ作用、つまり、DNAの一部が抜けたりミスコピーしない状態を保つ作用があり、それが寿命を伸ばすことにつながっていることを発見したのです。

 リボソームRNA反復遺伝子の不安定化は寿命の短縮を招き、安定化すると寿命が最大限延長すること、そしてその安定化をコントロールしているのがサーチュイン遺伝子であることを発見したのです。これは初めての科学的証明といえます。現在はなぜ不安定(DNAの一部が抜ける ― ミスコピー等)になると老化シグナルが出るのかを研究中です。

 サーチュイン遺伝子の活性化によって私たちの寿命は延びますが、通常、サーチュイン遺伝子は働いていないのです。空腹、低酸素、温熱、運動などの軽いストレスを与えることで活性化すると推測されていますが、食事(カロリー)制限が有効ということだけは確かめられています。
 ウイスコンシン大学でのアカゲザルの実験では、エサを30%減らすとサーチュイン遺伝子がはたらき、寿命も20~30%伸びることがわかりました。ヒトにおいては摂取カロリー、特に糖質制限でサーチュイン遺伝子が活性化すると考えられます。

 赤ワインの中に多く含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールを酵母に投与したところ、サーチュイン遺伝子が活性化したという報告があります。

 一方で、イタリア・トスカーナ州に住む65歳以上の783名を対象に追跡したところ、尿中のレスベラトロール量と心血管性・血管炎症、ガンとの関係性がないことがわかり、今後の研究が待たれるところです。