さぎの湯からiphoneのナビを見ると杭州飯店まで約30分だった。
杭州飯店開店時間は11時である。
さぎの湯出発は10時40分なのでちょうどよい時間だ。
周囲には田畑くらいしかない場所に杭州飯店があった。
3階建ての大きなお店だ。

 

 

 

 

 


専用の駐車場は100台は停められる。

 

 

 

 

 

 


入口を入って右手は座敷で長テーブルや小さめのテーブルが並び賑わっていた。
正面側はコンクリ打ちっぱなしでテーブル席であった。
奥に厨房があった。
こちらもほぼ満席であった。
ワイシャツにネクタイという人もいたけれどもほとんどの方は
ラフな格好であり作業員ぽい感じの方も多かった。
ぽつんぽつんと若い女性客や中年の女性客が座っていた。
黒いTシャツに首タオルをしたすこしふっくらとしたサービス係りの
男性。大きな声で手際よくお客さんを案内していた。
他に若い男性と中年の女性のサービス係りが次々にできあがる品々を
運び、お客さんが会計を済ませばテーブルをかたづけていた。
水はセルフなのだが、コップ以外になにかのガラス容器をコップと
して使っていた。瓶詰だとおもう。瓶詰の瓶で水を飲むというのは
はじめてであった(笑)
インテリアも古く傷がついていたり。
お金をおしんでいるというより昭和ならではの使えるものは使い無駄に
しないという精神が伝わってきた。

 

 

 

 

 


昔の記憶を呼び起こすような天上。
誰しもこういった天上の店でテーブルの上の丸いテーブルを
くるりとまわし料理をとりわけたという経験はおありでしょう。
中華料理屋風の店内であるが、一方で街の大衆食堂的な雰囲気もあって
印象的であった。

 

 

 

 


みなさんほとんどが中華そばを食べており、ざっと見たところカレーライスを
食べている人は一名だけであった。
他にもセットがあったり、単品で中華丼、チャーハン、麻婆丼などがあるが
食べている人はいなかった。
そして注文を受けているときに聞きなれない言葉を聞いた。

 

 

 


「おおあぶら」

 

 

 


そう言っているように聞こえた。

 


東京で言うところの「脂多め」のようだ。
あちこちから「おおあぶら」と聞こえてきた。
中高年の方も「おおあぶら」を注文している。

 

 


ネットで見るに、すでに背脂が丼を覆い尽くしている感じだったから
当然「おおあぶら」にはせず普通でお願いした。
またせっかくきたので半ライス(250円)と餃子2個(400円)も注文した。
ところで東京や東京近郊ではランチタイムに半ライスがサービスになるという
こともまれではないし、家系チェーンなどではライスと一緒にラーメンを食べる
人もめずらしくない。
杭州飯店はネット情報によると濃い醤油味で脂でこってりしているというから
半ライスを注文する人がいてもよさそうである。
ところがこれだけ大勢のお客さんがいて半ライスを注文したのは僕一人だけであった。
みなさんひたすら中華そばのみを食べていた。
8人掛けのテーブルに相席となったが、向かいに座った60代前半くらいの
男性が中華そば大油(おおあぶら)だった。
千石自慢ラーメンや土佐っ子系のように背脂がびっしりと埋め尽くしていた(笑)
自分よりも年齢が上とおぼしき方方が大油中華そばを食べている。
どうもこれは燕三条独特のご当地文化であるようだ(笑)
両隣りのお客さんに中華そばが運ばれてきたが、なにか独特の匂いがするのである。
麺の匂いなのだろうか? スープから香る動物のガラとか節系由来のものでは
ないように感じた。

 

 

 

 

 

はじめに餃子2個が運ばれてきた。
想像したようにジャンボサイズであった。
なんだろうか、油を多めに使って揚げるようにして焼いたように見えた。
皮の下の部分がカリカリに揚がっているといった感じなのである。
おそらく水も使って蒸しているのだろう・・・・水分で皮がやわらかくなって
破けやすくなっていた。

 

 

 

 


箸で半分に割り写真を撮ろうとしたのだが皮がすぐにやぶけてしまった。
焼き方も豪快だけれどもなかの餡も豪快さがある。

 

 

 

 

 


さあ、初体験!!!
元祖燕三条ラーメンだ!!!

写真ではどうしても伝わらない。
写真を見ればよくある背脂チャッチャ系ラーメンに見える。
ところが実際はそれほどギタギタでもないし、そんなことよりも
老舗ならではの歴史が丼から伝わってくるのだった。
歴史が刻まれている・・・いやこのもりつけ、この匂い、すごい迫力で
長きを歩んできたことが伝わってくる。
こんな新鮮な気分になるのは久しぶりである。

 

 

 


まずはスープを!!!
さらっとしていて醤油味の返しがきいている。


料理の専門誌だったか、出汁というのはたとえばかつおで出汁をとるにも
テレビでやっているように大量に使うというものではないと書いてあった。
出汁というのはそんな風に大量につかうものではなく少な目に使うからこそ
よい味になるのだと書いてあった。
ラーメンでも豚ガラや鶏ガラを大量に使い、さらには長時間煮出したスープがある。
どろどろのスープで臭みもある。
ああいったスープが好きという人もいるけれど僕はそれほど好まない。
杭州飯店のスープはあっさり目に仕立てていた。
また煮干しの味も香りも東京で食べる燕三条ラーメンよりもきわめて弱かった。
要するにバランスのよいスープなのである。
こってりとした背脂と一緒に味わってバランスのよいスープだ。
すっきりとした醤油味のスープの中に動物系、煮干し、野菜(野菜も
使っているように感じた)など個々が美しいハーモニーを奏でているように感じた。

 

 

 

 

 

そして麺!!!
手打ちうどんのような麺であった。
いや、これはかんすいを使っていなければ完全にうどんである(笑)
やわらかくゆでており弱い腰である。さぬきうどんのように強力粉で
強い腰があるというものではないからこそこちらのスープと相性がよいと
感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


なんとも優しい食感でありスープにからませご飯を食べてもよくあう。

 


感動の一杯であった。

 

 

 

 


会計のときに煮干しの味は控えめなのですねと言うとうちはそうしていると
いうお返事であった。
はじめての杭州飯店であったので、まだまだこちらの本当の味はわからない。
お店の味は10回通ってもわからないものだ。
その日によって味も違うだろうし、そのときの自分の体調によっても違って
感じられる。また季節によっても違ってくる。時間帯によっても違ってくる。


こちらのお店で修行された方が成龍というお店をオープンされたらしい。
ネットの情報を見ると杭州飯店とたいへん酷似したラーメンを出しているそうである。
なので成龍のラーメンと食べ比べてみると本家の味もわかるのではないかと思っていた。
しかし成龍は定休日につき来店ならずであった。

 

 

 

 

 


行く店、行く店が定休日であったり、営業時間を変更していたりで
ふられつづけた新潟出張。
だんだんと新潟が嫌になっていた。
相性が悪いのだと思った。
しかし杭州飯店でのこの感動があったから、また燕三条まで
行きたいという気持ちになれた。