Valiant

(2005年/イギリス)



『Valiant』は2005年に製作されたCGアニメーション映画。イギリスのヴァンガード・アニメーションが製作し、ブエナビスタがアメリカでの配給を行った。

ブエナビスタはディズニー社の配給部門(現ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ)である。

声優にはユアン・マクレガー、ティム・カリー、ジム・ブロードベント、ジョン・ハートらが名を連ねる。


ユアン・マクレガーが主人公の声を当て、ディズニーが配給に名乗りを上げる程の作品であったが、日本では未公開であったため誰も知らない映画。

ソフトリリースも無く、視聴するには外国からDVDを取り寄せるか海外版のディズニーチャンネルに登録するかして、英語視聴する他ない。


確かに日本で配給してもヒットしなさそうな作品。まずキャラ造形が妙にリアルで可愛くない。『カーズ』や『モンスターズ・インク』のようにグッズとか作られなさそう。


主人公も、イラストを見ただけでは誰が主役なのかひと目で判別がつかない(キャラ立ちが弱い)。「ジャケットの真ん中にいるからコイツかな?」って感じ。次に舞台が第二次世界大戦だという事。日本の子供たちはそんなものを見る為に劇場に足を運ばない。


主人公は鳩。ハトと言えば伝書鳩。時は第二次大戦中。鳩はイギリス空軍の伝令部隊に所属する。彼らの任務は味方を優位に導くため、作戦に必要な情報や命令を伝えること。そしてある時、ヴァリアント達はイギリス海峡での敵の動向に係る重要なメッセージを運ぶ任を与えられる。そのメッセージを届けれるかどうかが連合軍勝利の鍵を握る。しかしドイツ空軍鷹編隊がこれに襲い掛かる。鳩たちは、強く大きな鷹の追撃をかわして無事、メッセージを届けれるのか⁉︎   という内容。


子供に分かりやすいのは、主人公が宝探しの冒険に出掛けるとか、その行動が目的に直結するもの。しかし『Valiant』の場合、目的は戦争の勝利。イギリスの勝利というより、イギリスは連合軍に加入しており連合軍の勝利がひいてはイギリスの勝利にも繋がる。そのためにハトは重要なメッセージを届ける。しかし、メッセージを届けるイコール勝利ではなく、メッセージを受け取った部隊がその情報を基に作戦を練り、敵を駆逐し降伏させ、初めて勝利となる。など、何重にも間接的な段階がある。それを子供に映画の中で説明しても分かりづらいし、しかし、その部分を省略しても、手紙届けたら急にハッピーエンドになってるので、見てる子供はポカンとしてしまう。そんなんで、「めでたしめでたし」と言われても。


しかし、この作品で一番重要なのは、総てが全くの創作ではなく、実際に鳩が手紙を届け戦争で活躍した事実がある事。鳩以外にも多くの動物が戦争で活躍をした。

『Valiant』はディッキン・メダルに端を発して創造された物語である。


ディッキン・メダルはマリア・ディッキンが発案してイギリスで誕生したもので、戦争で活躍した動物に贈られる勲章である。



多くの動物が戦争に駆り出され人間の戦いに巻き込まれた事実を美化する事は出来ないが、ディッキンの行為を単に偽善やエゴのひと言で片付けてしまうのも、また違うだろう。


ディッキンやディッキンに賛同した人たちも、自分本意に上から動物を見くだして表彰してやってたのではなかろうし、方向性が正しいかどうかは別にして、無力ながらも何も無い所から何か一歩を踏み出そうとした意思は尊重したい。


ディッキン・メダルはその意思が結実したものである。



〜あとがき〜

この記事を書くにあたって画像検索した際、検索結果に表示された『カーズ』のイラスト