催眠術それは人間の脳に暗示を掛ける事によって思考や行動に作用させる技術。

人を思い通りに操る----。そんな魔法みたいな事が本当に可能なのか。正直、そんなウマい話は無い。人を完全に操る事など不可能である。しかし“完全に”は無理でも“ある程度”なら可能なのだ。ある程度なら人は魔法に掛かる

昔からカウンセリングセラピーにおいてトラウマを抱える人の封印された心にアクセスする為に利用されたり、カルト教団の洗脳にも頻繁に悪用されるなど、催眠の有効性は歴史が証明している。催眠は超自然や超心理などの神秘的パワーとは一切関係の無い純粋なテクニックである。

テクニックにより人の心理を操作する。人の心理は巧みな誘導や暗示により影響を受けるものなのだ。人間の感覚には錯覚を起こす力や、一部の情報を基に不足する部分を補完しようとする脳の働きがある。視覚的にも図形に騙されたり、白黒の写真がカラーに見える錯覚をするなど、五感全てに錯覚や補完を備えているのだ。よって条件さえ整えば催眠は効果を発揮する。

しかし、詐欺同様、掛ける側にも上手い人とそうでない人がいる。そして、掛けられる側にも、掛かる人と掛からない人(掛かり易い人と掛かりにくい人)がいるのだ。

素直になんでも受け入れてしまう人や「私は絶対に掛からない」と強く抵抗する人は掛かりやすい。それは催眠術を信じている事を意味するからだ。依存心の強い人、ひとつの事に集中出来る人、想像力のある人も掛かりやすい。

全く信じないタイプが一番掛からない。また常に複数の事を考えているような人、冷静沈着な人、計算高い人、疑り深い人、自分に自信がある人も掛かりにくい。

信じる人は思い込む力が強いので提示された設定に乗っかりやすい。依存心の強い人は何か頼れるものを欲しているので、催眠術が本物であってほしいと心が望んでいる。集中力の高い人は目の前の事に深く入り込めるので心に届きやすい。想像力豊かな人は即座に否定せず催眠術の可能性にも素直に想像を広げれる。

最初から信じてない人は脳が思い込む作業に入らないので暗示が効かない。脳を活発に使って色々な事に気を配る人は、集中力が高い人と真逆でひとつの事に集中してない状態であり、言葉を投げ掛けられてる間もそのチョイスされたワードが気になったり、相手が何を考えているのかを読み取ろうとしたり、パフォーマンス時の仕草や演出に目がいったりするのだ。冷静沈着な人、計算高い人は物事の真ん中におらず俯瞰で見ているので場の雰囲気に取り込まれない。自分に自身がある人は依存する対象を必要としないので催眠術に期待や願望を求めない。

私も催眠術が効かないらしい。しかし私は催眠術に効果があると考えているので催眠術を信じている事になる為、自分もいつか掛かる可能性があるとも思ってはいる。だが催眠術を掛けられるシチュエーションがまず嫌いだ。私は術師に気を使って掛かったフリをするタイプでもないが、ずっと掛からないあの時間も気まずい。もう絶対掛からないのに必死に「ハイ!」とやられてる時間のツラさったらない。かと言って、もし本当に掛かってしまったら駆け引きに負け相手の手中に落ちた事になる。つまりこの行為にはハッピーエンドが無いのだ。言うなればこれはジャンケンデコピンだ。負けたら痛いし、勝っても別に人にデコピンしたいと思わないし指も痛い。喰らった相手が損をしただけでコチラに得がある訳でもない。人が痛がるのを見て楽しい人の遊びだ。

話を戻すが、催眠術は心理カウンセリングの一環として利用され、退行催眠で当人も気付かなかった心のつかえが取れるなど、精神衛生回復の手助けにもなるものであり、心理学や脳科学に基づいたテクニカルなアプローチなので場合によっては利用する事もありだと思う。

〜〜最後に〜〜
効果がないものがダメで、効果があるものがイイのではない。それらがどう利用されるかだ。なんの効果も無い単なるインチキは論外だが、効果が有っても、催眠・暗示を悪用される事だってある。"効果があるからこそタチが悪い"というケースもあるのです。
昔、一人のおっさんと複数の女性が奇妙な集団生活をしているのをテレビで見た事があります。女たちはそんな生活をする理由を「男の事が好きだから」だと言っていました。それを観て子供ながらに「これは恐らく催眠術被害だろう」と思いました。催眠術は怖いのです。気をつけましょう。


最高の催眠術映画
愛しのローズマリー
 女を見た目だけで選んでいた男が、別の側面にも人の価値を見出していくようになるラブ・コメディ。敬愛するファレリー兄弟監督作品。