『ジェニシス』は最終的にあれだけの興行収入を稼ぎ出したにも関わらず北米での成績が思わしくなかった事が懸念材料となり、『ジェニシス』から始まる三部作の企画は頓挫する。
世界的には大ヒットだろ?!「アメリカでの売り上げが予想よりー」とかお前らの勝手な予想知らんわ。予想が外れてることが、既にアテにならない予想だったかもしれないのに、それを基にされても。

その後、『ニュー・フェイト』が制作された事で『ジェニシス』の続編の望みは完全に絶たれる事になる。

『ニュー・フェイト』も新たなる三部作の一作目として仕切り直しでスタートしたが、続編が作られる気配はない。実際『ニュー・フェイト』は良い出来ではないと思う。


『ニュー・フェイト』の嫌だったところ

その1:ジョン・コナーの扱い
ジョンが邪魔だって気持ちは理解出来る。
けど、あれは…。一言で言うと雑。「よし、殺そう」バン!って、えー?それでいいの?曲がりなりにもキーパーソンよ?なんか発想が貧困じゃない?やり口、下品じゃない?もっと感傷的で絵になるような最期を用意してあげられなかった?

その2:他の作品への敬意がない
『ジェニシス』は歴史を書き換え、一作目以降の全ての物語を無かった事にして新たなる物語を創造したが、時系列で並べる事は出来た。
しかし『ニュー・フェイト』は“『2』の正統なる続編”を謳い、3作目以降を葬り去る決定を下し、完全に独立した脚本を仕上げる。白血病で死んだはずのサラが生きており、青年や成年に成長するはずのジョンが13歳位で殺され、完全に『3』や『4』とは繋がらなくなる。何処に差し挟む余地もなく厳しく切り捨てられ、シリーズに居場所を失うのである。

その3:ジョンを襲う不自然な刺客
普通に考えればスカイネットは抹殺が成功するまで延々と刺客を送り続ければいいのだから、ジョン・コナーは例え今助かったとしても結局いつか死ぬのだ。よって今回のような抹殺劇も無くはない。
ただ、最初の襲撃が失敗したら「次はもっと巧くやろう」とか「確実に仕留めよう」とか、より完璧を期そうとするのが普通だ。なのになんで最強のT-1000が倒された後に旧型のT-800なんて送って来んの?スカイネットは馬鹿なの?
任務が無くなり人間を理解していくうちに良心が芽生えていくシナリオ考えてたら、そこ見落としたのかな?シュワルツェネッガー登場させる事に目を向け過ぎちゃってたかな?

その4:ジョンの死の矛盾
T-1000は撃退したものの次にT-800がやってきた事でジョンは結局殺されてしまう。つまりマシン(AI)側の勝利で、ジョンは世界を救う事に失敗したワケだ。
しかし、サラは「ジョンと二人で世界を救ったけど、お礼はいいよ」みたいな事を言う。「未来にはスカイネットは存在しない。しかし、リージョンという新たな敵がー」みたいな話もある。
確かにAIが勝利してたなら人間側に大量の犠牲が出ているハズだが、人類は無事なまま。
て事はやっぱりジョンは死の前に、歴史からスカイネットを消し去る事に成功し、世界を救っていた事になる。じゃ、世界が救われた時点で以降の歴史が書き変わりスカイネットが無くなってるのに、書き換わった後の平和が訪れた世界のジョンの所に、存在しないスカイネットがターミネーターを送り込めたのはなんで?
仮にスカイネットが無くなる前に既にその時間のジョンの所に刺客を送っていたとしても歴史が書き換わる前の平和が訪れてない世界のジョンを殺す事になるから、ジョンは刺客に殺されてるのに、世界は救われてるってのはおかしいのだ。

その5:ターミネーターに進歩がない
全身が液体金属製であるほうが戦いに有利なのに、液体金属の核に骨格を入れた構造にする意味が分からない。若干T-Xの発想とカブってないか?
骨格部分と液体金属部分に分裂出来る(2方向から同時に攻撃出来る)のが今回の売りのようだが、T-1000の頃より技術だって進んでるワケだし、やろうと思えばフル液体金属でだってふた手に分かれて攻撃することは出来るので同時攻撃は骨格を採用した理由には成らんだろ?
ターゲットの捜索方法も古い。交通モニターや防犯カメラ、軍事衛星の監視カメラなんかに侵入して識別システムと照合するとか、コンピュータをハッキングして電子決済の履歴やセルラーホンの位置情報で居場所を特定するとかやっとけば十分でしょ。
まずは住所を確認して家を訪問とか不必要な事やってるから、ターゲット不在の家に一回行くような無駄足を踏む羽目になるんだよ。それに家を訪ねるならやっぱ職務上の強制力を発揮出来る警官でしょ。友人を装うってなに?「お父さん、あの、僕、娘さんの友人でして。今、ダニエラ居ます?テへ」とか、不審がられて居場所ひとつ聞くにも時間めっちゃ掛かってさ。
分かるよ。警官だと『2』と一緒じゃねーかって言われると思ったんでしょ?でも有効な対策ってのはいつも同じだから一緒でいいんだよ。登山の時にはそれが何回目の登山であっても、やはり登山に最適な装具で臨む。ピアノの稽古の道具持って山に登る日なんて一生来ないから。
『ジェニシス』はちゃんと警官

その6:Rev-9の散り際が分かりづらかった
液体金属に被覆されたRev-9は、殴られようがフッ飛ばされようが起き上がり、刺されようが切られようが修復し、ロケット弾で砕かれても爆発でバラバラにされても灼熱に焼かれても再生してしまう。あまりの再生能力の高さに「これは例え最終的に骨格部分が完全破壊されても液体金属部分だけで最後まで動き続けるな」と思っていたら、回転するデカい機械に巻き込まれ爆発して出てくると、むしろ骨格のほうがしっかりと機能を維持していて、液体金属のほうは形状が保てなくなりズルリと落ちて機能停止してしまった。「え?さっきまでも散々爆発や閃光くらって平気だったのに、今回のダメージはさっきまでのと一体ナニが違うの?」と困惑。もしかして整合性を無視して、自分たちの都合優先で物語進めてる?

その7:戦闘スタイルにも進歩がない
技術革新はないのか?科学というのは発展すれば発展するほど、進化のスピードを早めていく。新しい技術が生まれると、その技術を応用してまた新しい技術が生まれるからだ。科学界は相乗効果で掛け算式に進歩する世界なのだ。先の歴史である『ニュー・フェイト』は、『2』の頃とはターミネーターの投入台数や戦闘スタイルが変わっていなきゃいけないのに、まだ昔と同じ事やってる。「手がブレードのように変化し、それで攻撃」とか、いつまでやってんの!2本の手で攻撃するから強化人間に2本の手で抵抗されるんだろ!
変幻自在に形を変えれるんだから、造り出した無数の剣で攻撃するとか、全身ウニのようにトゲを伸ばし一斉に突き刺すとか避けれない攻撃出来るでしょ。あとは、人間の僅かな筋肉の動きを読み取って解析し、次の攻撃を予測してノーダメージで圧勝するとか出来るようになってないと。あと、攻撃は、剣とか鉄筋とかじゃなくて銃使おうか。進化が進むに連れ段々銃使わなくなるって、なんなの。ターミネーターの新しい攻撃方法、必死に考え過ぎて銃器の存在うっかり忘れてたろ?初期の頃はショットガンとか使ってたじゃん。
研究開発するなら、骨格じゃなくて液体金属のほうの技術開発に着手するべきでしょ。金属細胞内の情報伝達速度を増すだとか、個々の金属粒子の意思レベルを向上させて微生物サイズに分裂しても任務遂行可能とかにして、気付かせずに人体内部に侵入して破壊するとかさ。『ジェニシス』のT-3000は金属のナノ粒子という新技術を導入した前衛的な意欲が嬉しかったなぁ。


その8:Rev-9の外見も意味ない
手をブレード状に硬化させ、ビルの壁に突き刺しながらよじ登り、多くの人間が目撃する中、白昼堂々と骨格体と合体したり人間をなぎ払ったりするRev-9。そりゃそんだけ強ければ人の目を怖れてこそこそ隠れ回る必要なんか無いわな。けど隠れないならその人間界に溶け込みやすく工夫された見た目、要らんでしょ。そんなに見た目の開発に力注ぐならちゃんと隠れろよ。要るのかその能力?
檻から逃げ出したライオンが、逃げ惑う群衆の中を悠々と暴れ回るが如く、最初から人の目など意に介さないパターンの方が自然で良かったのに。未来世界でも機械軍はロボットの外見のまま戦うシーンあったけど

その9:AIの戦略も進歩ない
ターミネーターに進歩が無いのは製造してるリージョンが悪い。
次に、骨格体と液体金属とのデュアル攻撃とか考える暇あったら、もういい加減、ターミネーター大量投入して来いよ!物量作戦知らんのか。いつまでちまちま一体ずつ送ってくるんだよ!『2』の頃の科学力ではもしかしたらタイムマシンの性能の限界とかあったかもしれないけど、もう『ニュー・フェイト』はアウトだろ。いい加減にしろ!戦争舐めてんのか!命懸けなんだろ?
あとさぁ、過去で決着つけようとする戦略まだ続けないとダメなの?圧倒的な科学力があれば、未来の世界のままでも普通に人類と対決して決着つくんじゃないの?てかリーダー1人がそこまで戦局左右するもんかい?立場が人を作るって言うから、導く者の殺された危機的状況に陥っても、またそれを率いる新たな人材が出てきたりするもんなんじゃないの?そしたら、またその新しいリーダーも子供のうちに殺しに行くの?
それに未来世界だってロボットだからって必ずロボット軍を出撃させなくてもいいんですよ?実動部隊出さなくても弾道ミサイル撃つとか、毒ガス撒くとか、ウイルス兵器で死の病を蔓延させるとか、AI側無傷で人間だけにダメージ与える作戦は幾らでもあるんですよ?

その10:人類側も同罪
「今回は普通の人間ではなく強化型兵士です」じゃないのよ。真剣にリーダー護る気ある?たった一人じゃなく、もっと大量に護衛送って寄越したら?人類の希望を一身に背負った人間を護ろうとする時に立てる作戦じゃないよ。
戦地に競技審判員かなんか居て「両チーム、代表1名を過去へ!」とか言ってんのかな?

その11:そもそも脚本コンセプトに進歩がない
ジョン・コナーを歴史の舞台から退場させて物語を一旦リセットし、次、どんな新しいコト始めるのかと思ったら、次代のリーダーを過去に行って抹殺って、また?
ジョンを消し去ってまで君らが描きたかった事ってこれなの?
スカイネットがリージョンになって、ジョン・コナーがダニー・ラモスになって…。
『ターミネーター2』のリメイク作りたかったワケじゃないよね?
ダニーが過去の自分を守らせるために派遣したグレースも、『2』でいうところのT-800だし『1』でいうところのカイルなワケだ。やっぱリメイクやん!
誰が脚本書いてんの?
誰がこの脚本にOK出してんの?
今回は普通に新作作るのと違って『3』『4』『5』の犠牲の上にやってるんだから成功が絶対条件という重圧を背負って死に物狂いでやって貰わないと。
簡単に失敗されたら困るんですよ。

その12:製作クルーが図々しい
あんなにヒットした『ジェニシス』を頓挫させ、更には駄作の烙印押して無かったことにしてまで、『2』の焼き直しみたいな変わり映えのない物語を作っておきながら、その駄作認定した『ジェニシス』からターミネーターの表面を覆う生体細胞は古くなり見た目が老けていく設定はちゃっかり頂いちゃってるというね。それでいいのか君らは!プライド無いんかい!

『ニュー・フェイト』の良かった所は、マッケンジー・デイヴィスが強化兵士役を完璧に演じてた事。役作りにかなりの時間を費やし、相当なトレーニングを積んだ事でしょう。前年の『タリーと私の秘密の時間』出演時とは別人。
努力を感じるからこそ可哀想になりました。
次は良い作品に巡り合って下さい