169話 : 二人の夜 | 熱があるうちに

熱があるうちに

韓ドラ・シンイ-信義-の創作妄想小説(オリジナルキャラクターがヒロイン)を取り扱っています
必ず注意書きをお読みください
*ヨンとウンスのお話ではありません

 


「私の心が何処に在るか、しっかりと刻まねば分かりませぬか?」


「嘘を真(まこと)に、致しますか?」



なにがどうしてこうなった??

仰っている言葉が意味不明ですが??

しかし、押し倒されて手首を捕まれ寝台に縫い付けられるような体勢と、チェ・ヨンから向けられる熱い視線で察してしまう。

いやいや、待って??

目はパチクリを繰り返し、口も金魚のようにパクパクと動くが言葉が出ない。

心が何処にあるかって?
まさか、まだ私にあるの?

なにを、どこに、刻むの?

嘘を真とは、元国へ貢女として行くことを阻止する為についた、あの嘘のこと?

チェ・ヨンが私を無理矢理襲ったと王様に言った嘘のこと?
いや、襲ってないけど。

え、今からその嘘を本当にすると?


「ま、ま、待っ、て。ま、待って、…… っ!」


足をばたつかせるが開いた両足の間に体を滑り込ませるチェ・ヨン。

ぎゃあ!?
私の貞操の危機!!


「んっ、」


耳朶を甘噛みされ、耳の後ろや穴を舌で舐められピチャピチャという水音が脳に響いた。

どうしようどうしようどうしよう

抵抗する気も失せて、されるがまま彼に翻弄される。

舌は首筋を這い、はだけたままの衣をズラされ鎖骨に吸い付かれた。


「っ、」


ああ、またキスマーク付けたな。

でも、このまま流されるのは良くないと思うの

色々準備もあるし、ここは隊舎内でしょ?!


「せ、せめて勝負下着の時にして!!」

「………… は?」


咄嗟に出て来た叫びがコレだなんて何て情けないのだろう。
いや、勝負下着は大事ですよ。


「あ、あのね、相手の合意なしのエッチはダメだと思うの!」


何を言っているのだ私。


「私は初めてだし、その、色々と準備が、……」


身体を洗いたいです、隊長。


「えっと、だから、嫌ではないの。嬉しいのだけど、その、勢いで、そういうのは、」


何を言ってるんのか自分でも分からなくなった。


「お分かりいただけましたか?」

「え? あ、うん」


チェ・ヨンはそう言うと私の手首から手を離し、乱れた髪を整えるように撫でる。


「真(まこと)に?」

「チェ・ヨンさんの、……、ヨンの心は、私に、」

「ええ」

「本当に?」


彼の真似で聞き返しただけなのに、たちまち不機嫌になるのやめてくれ。


「まだ、お分かりいただけませんか」

「あっ、分かった、から、ん~~、そ、そこは、 やめっ!」


衣と肌の間に手を忍ばせ、酔っ払いオヤジのような手付きで腹や腰に触れてくる手を叩く。


「無理矢理でも襲い、己のモノにしたい程、貴女を慕っているというのに、」


ナニヲイッテルンデスカネ?

チェ・ヨンってこんな人だった?
この世界だから?


「鈍感というか、何と申されようか ……」


大きな息を吐いて私の横に移動し、仰向けになり腕で目元を覆う。


「む、無理矢理 自分のモノにするのは、よくないと思う」


「そこじゃねぇよ」というような視線が腕の間から注がれた。

つまり、チェ・ヨンはずっと変わらず私の事を好きでいてくれたけど、私がとんでもない勘違いをして彼を傷つけてしまっていた、ということ?


「…… ごめんなさい」


上半身を起こし、彼を覗き込む。

少し沈黙が続いたが、顔を覆っていた腕を外した彼は、柔らかい瞳を向けながら髪をすき、頬に触れた。


「それで、ソラの話とは?」

「うん。…… その、ヨンが私の事をただの友人とかパートナーでもいいから、残る事が許されるならって話そうと思ってて、」


どんな形でも此処に残って皆と未来を歩みたい。


「帰る帰らないって我儘言ってごめんなさい」


甘えるように大きな手に頬を摺り寄せる。


「貴方と一緒に、生きてもいい?」


頬に触れていた手が首の後ろに回り、強く引き寄せられたかと思ったら唇が重なる。
承諾の証だというように押し付けられた。


「…… ん、…… っ、…… はぁっ、……」


呼吸すら奪うような彼のキスに息苦しさを覚えるが、教えてもらったように鼻で呼吸をしながら彼の唇に応えた。


「ふっ。漸く慣れてきましたか」

「む。笑うな」

「痛っ!?」


私の下手なキスを笑うから、鼻を噛んだ。


「この程度で「痛い」なんて声を上げちゃう隊長は、まだまだ鍛錬が必要ですね」

「新人隊員にはもう少し厳しくせねばなりませんか」

「んぐ。…… 新人いびり反対」


私が笑うと彼は私の鼻をつまむ。


「はいはい。新人はそろそろ寝る時間です」


服を整え、寝台を降りて向かい合わせに置いた椅子のベッドで寝ようとしたが、腕を引かれ再び寝台に戻されてしまう。


「…… 椅子で寝る順番を言いましたよね、隊長」


寝台に横向きになり、後ろから抱きしめられた体勢のまま抗議。
昨日、私が寝台を使ったから明日は使ってと言ったのに。


「新人は隊長の側を離れるな」

「え、それとこれはどういう関係があるの?」

「返事は」

「…… はい、隊長」


寝る場所はどうするの。


「このまま寝る」

「はい??」


この狭い寝台を二人で使うの?


「隊長命令だ」

「職権乱用です」

「返事は」

「私、寝相が悪いですよ」

「知っている」


昨夜、寝台から落ちそうになったところを押さえられたような夢を見た気がしたが、夢ではなかったらしい。


「殴ってしまう、かも ……」

「返事は」


命令されたら部下は従うしかない。


「…… はい、隊長」


隊長と部下ごっこはやめようと決心した。
絶対逆らえなくなる。


「おやすみなさい」


挨拶をして数分もしない内に、彼の寝息が聞こえた。
早いよ、のび●君かな。

でも、この人なら寝相の悪さで殴ったり蹴ったりしても大丈夫な気がする。

そして私は、抱き枕にされたまま眠りに落ちていった。