それでも「クラ地峡構想」を諦めきれない中国
このような状況にもかかわらず、中国が引き続きクラ地峡の運河建設に大規模な資金提供まで行いたいとするオプションを放棄しない最大の理由は、南シナ海からインド洋に向けた自国の海軍艦艇の迅速な展開を可とする事にあるのではないだろうか。つまり、かつて英国海軍が構想したこの運河をもっとも必要としているのは、もはや英国海軍でも各国の商船隊でもなく、唯一中国海軍だけであろう。
もしクラ地峡における運河建設が実現すれば、それは「パナマ運河建設と同じスケールのプロジェクトになるし、中国の海軍船と商船隊は、東アフリカから日本、朝鮮半島へと伸びる二つの大洋をつなぐ海洋ルートを手にすることになる」であろう 。さすれば、運河の両端の基地には、建設作業を通じて設営される大規模なインフラが、運河完成後も中国の軍事、経済基盤として残置され、中国は当然ながら、その影響力の維持、強化を図っていくものと想像される。
おそらく中国は、クラ地峡に建設する運河が演じる役割として、米海軍におけるパナマ運河のそれを期待しているのかも知れない。現時点でマラッカ海峡を支配するのが米海軍である以上、マラッカ・ジレンマの言葉通り、この海峡は中国にとっても常に自国の海洋権益を脅かす戦略的チョークポイントである。そのため、中国は自国が完全支配を築けるチョークポイントとして、クラ地峡の運河に着目しているのであろう。
これらの事から、クラ地峡における運河建設はコスト的にもそれほどのメリットがあるとは言えず、少なくとも日本にとって安全保障上の理由から支持推進すべきものではない。つまり日本は、1971年にソ連軍に対する軍事上の懸念を考慮してマラッカ海峡の浚渫を断念したのと同様の理由で、クラ地峡における運河建設の動きを注意深く冷静にウォッチしていく必要がある。
これらの事から、クラ地峡における運河建設はコスト的にもそれほどのメリットがあるとは言えず、少なくとも日本にとって安全保障上の理由から支持推進すべきものではない。つまり日本は、1971年にソ連軍に対する軍事上の懸念を考慮してマラッカ海峡の浚渫を断念したのと同様の理由で、クラ地峡における運河建設の動きを注意深く冷静にウォッチしていく必要がある。
インドの反応
こうした一連の中国の動きに神経を尖らせているのがインドである。上記の「真珠の数珠繋ぎ」戦略とされる中国の動きを地図上で示すと、インドは完全に包囲された形になっている。実際、インドはその事をよく認識しており、スリランカにおける中国主導のハンバントタの港湾施設に対し、「真珠の数珠」戦略の一環としてインドを包囲しようとするものだとして警戒感を表した。
中国は港湾建設に協力するなどしてインド周辺国に着々と拠点を築く以外にも、モルディブ、モーリシャス、セーシェルなどと政治外交上の絆を深め、インド洋での政治的・経済的・軍事的のプレゼンスを高めようとしている。そんな中国の野心を抑え込む苦肉の策として、インドは自国の海軍を使って中国の船舶を守るという案すら検討している。
もちろん、このような案はインドにとって本気とも現実的とは思えないが、インドは現在進行形で急成長している超大国であるが、同時に隣で急成長する中国の存在をかなり意識して自国の安全保障政策を決定せざるを得ない。例えばインド軍は、インド洋東端のアンダマン、ニコバル諸島に戦略的な統合部隊を配備しているが、中国軍はその直ぐ近くのミャンマー領ココ島に海軍基地や電子情報傍受施設を設置するなどして対抗し、インド軍の動きを封じんとしている。
もちろん、このような案はインドにとって本気とも現実的とは思えないが、インドは現在進行形で急成長している超大国であるが、同時に隣で急成長する中国の存在をかなり意識して自国の安全保障政策を決定せざるを得ない。例えばインド軍は、インド洋東端のアンダマン、ニコバル諸島に戦略的な統合部隊を配備しているが、中国軍はその直ぐ近くのミャンマー領ココ島に海軍基地や電子情報傍受施設を設置するなどして対抗し、インド軍の動きを封じんとしている。
インドが核兵器を開発した際には、長年のライバルであるパキスタンへの抑止力以上に、中国への対抗手段という意味合いが強いと述べたインド人政治家もいたというが 、それもあながち嘘ではないだろう。インドという国は、外交・軍事政策から内政政策まで何でも即決出来る一党独裁の中国とは違い、何事を決めるにも多少の時間を要する民主主義の国であるため、どうしても中国より動きが数歩遅れざるを得ず、中国はそのスローな政治的間隙を縫う形でインド洋に展開し、「真珠の数珠」でもってインドの首を少しずつ締め始めているのである。
(続く)
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