青春ミステリ | 固ゆで卵で行こう!

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ハードボイルド・冒険小説をメインにした読書の日々。


時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

 

 

 

高等支援学校を舞台にした、日常の謎を描いた青春ミステリ。

主人公は、中学時代は周りからお客さん扱いでぼんやりと過ごしていた架月。

人が何かを話していても、気づけば自分の考えに没頭し、聞いているようで聞いていなかったりするその姿に、読み手である自分をどこか重なるものを覚えたりも。

そういや説教されたり叱られたりされている際も、気づくと別のことを考えていることもあって、先輩から人の話を聞いていないとか、他人に興味ないとか言われたことがあるかも(笑)。

そんな思い出もあって、架月のことは他人事と感じるどころか、架月は自分だと思ったりも。

そしてそんな架月だけでなく、架月に関わる同級生や先輩たちである、深谷や莉音、利久先輩や由芽ちゃん先輩も、ちょっとだけ特別なだけで、それはみんな何かしら自身の中あるものなんじゃないでしょうか。


さて、主人公の架月は、学校内で起きる事件の容疑者となった先輩や同級生に対し、疑いを抱く自分自身を厭う気持ちを自覚しつつ、その容疑を晴らすべく調査に乗り出していきます。

そうして描かれるのは、優しくもほっこりするような結末だけど、どこか切なくも愛おしく感じる物語。

それらがとても丁寧に、そして真摯に描かれているので、自分の中で欠けていたいたり、忘れがちなものに改めて気づかされる、そんな素敵な作品でした。

そうそう、架月が自分の弱い部分を周りに知ってもらっていれば皆から助けてもらるみたいなことを言っていた場面でもハッとさせられました。

大人になればなるほど自分の弱さをさらけ出すのは、自尊心だったり羞恥心だったりが邪魔しますし、それが出来るのは一つの強さですよね。

 

 



ところで本書には続編の構想があるそうですね。

架月たちのちょっとだけ特別な青春を再び垣間見ることができる日を楽しみに待ちたいと思います。