言わずと知れたハードボイルド小説の金字塔。
小鷹信光版で何度か読んでいますが、田口俊樹氏による新訳版が刊行されたので、久しぶりに読みました。
さて、何度か読んでいても「意外に難しい」という印象を持っている本書。
それは多分、登場人物それぞれ、特にブリジットとカイロがどこまで本当のことを話しているのかが分からないからなのかも。
ブリジットに関していえば、最初に探偵事務所に依頼に訪れた瞬間から嘘ばかりでしたしね(笑)。
そういう意味ではサム・スペードに対して最後に真実を語る場面、それすらも全て、そう「愛」について語ったことも含め、真実ではないのでは、とも思えます。
それでも今回の新訳版は読みやすく、物語の輪郭と解像度が随分くっきりした印象を受けました。
そしてその分、サム・スペードを始めとした登場人物について色々と思考したりする余裕を持ちながら読めたかも。
サム・スペードに関しても、その内面、思考や心情は描かれずその非情さが浮き彫りになっていますが、それでもふとした描写に人間らしさがあらわれているのも印象に残りましたし、秘書のエフィとの不思議な関係性も気になりました。
いまどきハードボイルドは流行らないかも知れませんが、今後も読み継がれていく物語なのは間違いないですし、一度は触れてみて欲しい作品ですね。

