元海兵隊で元保安官補、現在は葬儀屋で働く青年ネイサンは、ニュー・ホープ教会のイーソー牧師の死の真相を調べて欲しいと、信徒から頼まれる。
気乗りしないまま調べ始めるネイサンだったが、イーソー牧師の死から予想以上の暗部が浮かびあがる。
S・A・コスビーのデビュー作。
デビュー作のせいか、『頬に哀しみを刻め』や『すべての罪は血を流す』に比べると、なんというか、青く若々しい印象です。
もちろんこれは悪い意味ではなく、そう、主人公のネイサンは〈闇〉を抱えてはいるものの、文字通り強くタフで、基本的にはどんな状況でも減らず口を叩くような陽気さを持ち合わせており、強い正義感も。
そこへもってきて女性にモテモテなんですが、さすがに盛り込み過ぎ?!(笑)
絶縁状態だったものの、葬儀など必要な手続きのために町に帰ってきたイーサー牧師の娘リサといい仲になるのは、まぁお約束でしょう。
でも、友人から「このあたりの女みんなとしてんのか」と言われるほど下半身に正直な様子には思わず笑ってしまいました(笑)。
さて、ストーリーや事件の裏にあるもの、炙り出されてくるものは嫌悪感たっぷりなもので、あってはならないものなのですが、この手の作品のネタとしては割とベタなものかも。
しかし、暴力と死がこれでもかと描かれる中で、ネイサン自身が怒りに我を忘れ、相手をぶちのめす場面では「やってしまえ!」と、思わずこちらまで血が熱くなるものがあります。
特に、ネイサンの両親が事故で亡くなった際に、加害者である町の有力者の息子がその罪を逃れるよう手引きされていたという背景があるだけに、ネイサンの怒りの発露には余計に共感してしまうのかも知れません。
また、頼りになり過ぎるぐらい頼りになる友人で携帯には「ソシオパス」と登録するぐらいの暴力のスペシャリストであるスカンクなど、登場人物も魅力的です。
それに、コスビーらしく、やはり家族の物語としての側面も楽しめます。
特に、葬儀屋の代表でいとこのウォルトを危険から遠ざけようとした際にネイサンが心に傷を負う場面などは一緒になって切なくもなりました。
それにしても暗き闇の中でもネイサンが失う事のない正義感と怒り、そしてそれを助長するようなスカンクの活躍がもっと見たくなりますし、シリーズ化されていないのが不思議なくらいですね。
ちなみにネイサンが働く葬儀社は、現時点でのコスビー最新作である『すべての罪は血を流す』にもチラと登場しているので、もしかしたら今後、ネイサンたちが他の作品で再登場したりするかもと期待です。

