ドートマンダーが故買屋のアーニーから持ち掛けられた仕事は、事情により留守にしている大富豪プレストン宅から美術品などを盗みだすというもの。
ところが泥棒仲間と計画を練るためのアジトに使用している〈OJバー&グリル〉が無くなってしまう危機にあると知り、まずは〈OJバー&グリル〉を救うため動き出すのだけれど…。
短編集の『泥棒が1ダース』以来、長編では『バッド・ニュース』以来となる、〈ドートマンダー〉シリーズの未訳だった本書が訳出されましたが、あの天才的ながら不運な泥棒ドートマンダーが帰ってくると聞いただけで嬉しいニュースでした。
さてさて、今回の大活躍メンバーはやはり故買屋のアーニー。
自身が周りに不快を与える人物であると自覚しているアーニーは、カリブ海にある〈地中海クラブ〉という隔離施設に入っていた、というか家族に入れられていたですが、そこで投資家で大富豪のプレストンという男と知り合います。
そのプレストンは元妻たちからの令状速達を受け取らないようにするため、多くの美術品をコレクションしているニューヨークの自宅には帰れないという。
いけ好かないプレストンに我慢しながら情報を仕入れたアーニーは、ドートマンダーたちに留守宅への窃盗をもちかけるというのがメインストーリー。
けれども、ドートマンダーたちがいつも仕事の打ち合わせをしている〈OJバー&グリル〉が無くなってしまうという危機に、ドートマンダーがなんとかしようと働きかけるというサイドストーリーが。
また、プレストン側のストーリーも描かれる事で、多面的に物語は進みます。
その分、ドートマンダー自身が泥棒としての働きを見せてくれるのは終盤に入ってから。
なので、ドートマンダーが不運の連続に合ってドタバタするのを期待していると、若干物足りないかも?!
でも、ドートマンダーたちに不運が舞い込まないはずはありません。
終盤に重なる不運に見舞われたその結末やいかに・・・!(笑)
ところで今回、生まれ変わったアーニーの活躍の他に、印象に残ったのはケルプと安全ヘルメットのくだり。
工事現場で「ヘルメットは」と何度も問われるケルプですが、これが後々の伏線になっている様子、うまいなぁと感心したりも。
また、今回初登場で、ある意味キーパーソンとなるジャドスン。
19歳のジャドスンは、J・C・テイラーの元で働く事になるんですが、初々しく嘘が下手ではあるものの、どうやらこの先にも登場するようで、将来有望な悪党になれるかもと期待です。
なにはともあれ思わずニヤニヤしてしまう描写はやはり多くて、今回も楽しかったです。
本事が売れて、未訳のドートマンダーものが是非ぜひ翻訳されますように!
ところで今回『うしろにご用心!』は、一度読んでから過去のシリーズ作を読み返し、それからもう一度読んだんですが、あらためてシリーズを通して読むと、アーニーのところに独りで行くのが嫌なドートマンダーがケルプを誘うもケルプも嫌がるくだりとか、登場人物のやり取りだけでもお腹いっぱいになれるぐらい楽しさ倍増でした。
なので絶版となっている過去の作品もこれをきっかけに復刊し、多くの人がこのシリーズに触れてもらえるようになると嬉しいな。


