全国統一大学入試を控えた高校3年生の陳念。
ある日、同級生の女生徒が苛めを苦に自殺を図ると、吃音のある陳念が次の苛めの対象に。
そんなある日、下校中に集団暴行を受けている少年を目撃し、その少年北野を助けようとした事がきっかけで、二人は惹かれあうように。
しかし、陳念に対する苛めはエスカレートし、やがて起きる連続暴行事件が二人を…。
中国の青春ミステリにして純愛小説。
鮮やかに目に浮かぶような情景が美しく、特に前半はその詩的な、というか文学的な文章にうっとり。
そしてミステリ要素を含めながら描かれていく後半は、二人の少年と少女が守ろうとしたものの行方を想って夢中にさせられました。
信じるもの、信じられるものとは果たして。
母親と離れて暮らすしか無く、吃音のせいで孤独を深めていた陳念。
その生い立ちからストリートで生きるしかない北野。
互いに相手を守ろうとするその姿は切ないまでに純粋です。
そんな二人が惹かれあう純粋なその様子、そして流れるように描かれる物語はどの場面も印象的です。
中でも、北野が自身の住処に陳念を連れて来た際に見せる魔法のような景色は鮮やかに目に浮かぶようで美しかったです。
この場面、数年前に公開された映画版では無かったのが残念に思えます。
それに訳文もまた日本の小説を読んでいるのと違和感なくて読みやすく、様々な情景もイメージしやすかったです。
苛めや暴行に関しては目を背けたくなるような描写もあり、陳念たちが受ける痛みに辛くなる事もありましたが、二人が築こうとした世界はやはり美しかったですね。
なお、本書には二人のその後を描いた小冊子がついているんですが、二人の未来が垣間見えたのが嬉しかったですね。
また、映画版とは設定や展開、結末も違う事もあって、映画を観た人でもまた別の感動を得られるのでは無いでしょうか。
という訳で、映画を観たという方にもおすすめです!


