月に一度、小樽にある古民家カフェで集まる「坂の途中で本を読む会」という、20年も続いている読書会。
その読書会の会場となる喫茶店を叔母から引き継ぎ、超高齢メンバーの中に交じる事になった安田という作家もどきの青年を通じて描かれる、微笑ましくも避けられない時の流れに切なくもなる物語。
課題書である『だれも知らない小さな国』を軸にして、読書会メンバーそれぞれが思う『だれも知らない小さな国』が浮かび上がってくるのですが、そこにはそれぞれが歩んできた人生や思いが反映されています。
それは思いもしなかった気付きを、メンバーからやっくんと呼ばれるようになった安田を通じて読者にも与えてくれて、読んで、思って、考えて、そしてそれを言葉にする事で形になる事の効果も教えてくれているような気もします。
その中で、人の話を聞かない、検診や通院についてなどの「あるある」といったものなどもユーモアたっぷりに描かれていて、何よりメンバーの個性が楽しく、読んでいて「ふふ」と顔が笑っている事に気付く事も。
また、それぞれ色んなものを抱えて生きてきた中で、読書会、そしてそこに集まるメンバーの事を大切に思う様子も胸を熱くさせてくれます。
うん、こんな風に大切に思ってもらえるような読書会、いいですよね。
切ないものもあるけど、あたたかく優しい気持ちになって読み終える事ができました。
ところで語り手であるやっくんですが、心の内を語っている場面では結構独特というか、難しい表現がされているのがちょっと気になりました。
心のうちはもうちょっと平易な言葉の方が自然なような気もします。
ま、こういうところに引っかかるのが文芸作品をあまり手に取らない自分の弱点でしょうか(笑)。

