『レイアウトは期日までに』 碧野圭 | 固ゆで卵で行こう!

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時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

 

 

デザイナー志望の赤池めぐみは、契約社員として働いていた先の部署が閉鎖される事に伴い、職を失う。
更にはペット禁止のアパートにて犬を保護しているのが大家さんにバレてしまい、住む家も失う事に。
そんなピンチに、めぐみは同年代ながら気鋭の装丁デザイナー、桐生青のところで住み込みで働ける事になるのだけれど…。




本好きなら書店でその装丁に惹かれて買ってしまう、そんな経験は一度ならずあるんじゃないでしょうか。

そういった見た目の印象など店頭で「ビビッ」ときた本は、大概「あたり」だったりするんですよねぇ。

そうして出会った作品で、自分の人生に大きな影響を与えてくれたりも。

ネットで本を買うのもいいですが、そういう意味でも、やはりリアル書店での出会いって大切だなぁと思っています。


さて、そんな本の装丁デザイナーの知られざる姿を描いたお仕事小説となれば、気にならないではいられません。

てな訳で読んでみたんですが、実際装丁に関する事って全くと言っていいほど知らなかったので、「なるほど~」と頷く事もしばしば。

全体的なデザインもそうですが、文字のフォント、紙の種類、更に印刷方法までと、普段、ほとんど気にも留めていなかったような、本が出来上がるまでの過程が興味深かったです。

その中での依頼主の意向、経費や予算、それに技術面など様々な課題や問題が浮き彫りになるんですが、何よりも人間関係もやはり大事であるというのは、どんな仕事でも共通するのかも知れませんね。

ただ、お仕事小説としてはもうちょっと深いところまで描いて欲しかったなと、物足りなさを感じる部分も。

仕事に関して妥協はしないけど、それ以外は食べるものすら頓着せず人間関係を構築するのが苦手な青。

そんな青とクライアントの意向への調整に心身を削りながらも、自身のデザイナーとしてのスキルアップを図りたいめぐみ。

二人が、もっとディープな問題や壁にぶち当たり、悩みながらも解決していくような場面をもっと見たかったかも。

けれども、駆け出しのデザイナーのめぐみと、才能あるけど奇人呼ばわりされていた青。

一緒に生活し仕事をする中で、互いの良いところや悪いところも見えてくるのですが、その二人の長所がうまく掛け合わさり、良きパートナーとなっていく様子は清々しくも楽しく、二人のバディぶりをもっと見たくなりました。